「失敗ができない日本」が変わらなかった特殊事情 会社の倒産で経営者も自己破産に追い込まれた

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一方で、中小企業なども法人と経営者個人の資産の境界が曖昧になっていたり、きちんとした会計制度が完備されていない企業が多いのも事実だ。全国銀行協会が2014年に「経営者保証に関するガイドライン」を制定し、創業や起業、事業承継など中小企業が抱える問題点を想定したうえで個人保証ができるケースを定めているが、現実的には個人保証は減少しなかった。

しかしながら、ここにきてやっと個人保証に対する監督指針の改正、という形で新しい道が見えつつある。長年にわたって、日本経済の成長を阻んできた銀行の融資制度について検証してみたい。

なぜ日本に無保証融資が定着しなかったのか?

そもそも、株式会社などの法人は、経営者や出資者が「有限責任」で、企業が倒産しても借入金等の債務が、経営者等の個人財産にまで及ぶことがないように作られたものだ。経営責任が会社内に限定された組織、それが株式会社といっていい。ところが、日本で当たり前に行われてきた経営者に責任を転嫁する「個人保証」は、株式会社にする意味がない商習慣として継続されてきた。とりわけ、地方銀行や信用金庫、信用組合といった中小の民間金融機関では、長期にわたって、個人的な債務保証を求めることが常態化してきた。

昔から、日本は一度失敗したら、二度と立ち直れない社会であるといわれてきた。会社が倒産した場合、経営者もまた自己破産に追い込まれることが多く、ユニコーンと呼ばれる新たに起業する会社が少ない理由のひとつでもあった。伝統のある古参企業も大きな冒険ができずに、どうしても保守的になりがちだ。下手に冒険して失敗したら、経営者自身が破綻するのだから、当たり前と言える。

金融機関は担保や保証にかかわらず、その会社のビジネスモデルや将来性、時代の変化など総合的に判断して企業に融資するのが本来の姿だ。個人経営者の多くが会社と自己の資産を明確に分離してこなかった、という事情もある。結果的に、いつの間にか株式会社という限定責任の組織でありながら、経営者やその親族などが自分の家や土地を担保に提供し、連帯保証人という形で資金を調達するのが当たり前になった。

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