地方税改革の経済学 佐藤主光著 ~迷走を重ねる改革にあるべき大胆案を提示
地方財政を議論する際、多くの人は主要な財源を国が独占していると考える。現実には、所得課税、資産課税、法人課税、消費課税など、地方税にはほとんどのメニューが揃っている。たとえば、消費税のうち1%は地方消費税であり、社会保障・税一体改革が実現すれば、2・2%に引き上げられる。地方税増税も議論されていることは、ほとんど認識されていない。
課税メニューが多くても国の言いなりで、地方は独自に税率を決定できないと考える人も多い。しかし、現に名古屋の河村市長は住民税を引き下げている。一方、大企業が納税の中心となる地方法人税については、標準税率を超える課税を行うケースも少なくない。首長は選挙への影響を懸念し、取りやすいところに課税しているのである。このように、実際の地方税は通念と大きく異なり、これまでの地方税改革は迷走に迷走を重ねてきた。本書は、理論的な視点からあるべき姿を示し、大胆な改革案を提示する。
本来、ナショナルミニマムについては、地方が執行する場合でも国が財源を確保し、それを超える公共サービスは地方が住民負担で独自に提供すべきである。国税が担税力に応じた課税となる一方、地方税は受益に応じた課税が基本となる。そうすることで、住民の行政サービスに対するコスト意識が生まれ、行政の効率化が図られるが、現実には応益原則は不徹底である。その帳尻合わせとして、日本では諸外国に比べて、地方税収に占める法人税の割合が相当に高い。納税の中心が大企業であるため、税収の地域間格差が拡大すると同時に、景気の振幅で地方税収が不安定になる。本書では、地方の法人税と国の消費税の入れ替えを提案する。