宮川さんが奨学金を通じて学んだ「自己投資」の精神は、仕事においても重要な価値観となっている。自分の限られたリソースをどう活用するか、そこには彼流の哲学がある。
自分のため『品位あふれる閑暇』を確保したい
宮川さんが部屋で過ごすとき、大切にしているのは「ぼーっとすること」。
現代はタイムパフォーマンスを上げるために、すべての時間に予定を詰め込んでしまいがちだ。しかしあえて余白の時間を作ることが生産性を高めると、宮川さんは言う。

「窓の外を眺めてぼんやりするような時間にインスピレーションが湧きます。映画監督のティム・バートンはそういう時間が『最も生産性の高い時間の使い方』だと言っているんですが、僕も同じように考えています。
もうひとつ、僕の愛読書に國分功一郎さんの『暇と退屈の倫理学』があるんですけど、そのなかに『品位あふれる閑暇』という言葉が出てくるんです。
労働者階級は、余裕ができてもその過ごし方を知らず、暇に苦しみ退屈してしまう。それに対して、古い有閑階級、たとえば貴族のような階級の人々は『品位あふれる閑暇』の過ごし方を知っている……というようなことが書いてあって。
僕はこの『品位あふれる閑暇』という言葉が好きです。奨学金を返しながら働く自分は労働者階級といえるかもしれませんが、そこに甘んじていたくない。だから忙しくて追い詰められていても、自分のための『品位あふれる閑暇』を確保しようと思ったんです」
(「品位あふれる閑暇(otium cum dignitate)」はキケロの言葉であり、ヴェブレン『
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収入の格差のことはよく言われるが、時間の余裕にも格差はある。そして収入の低さと時間の余裕のなさがイコールになってしまうことも、よくあることだ。それだけでなく、私たちはなけなしの空いた時間さえも、多すぎる情報や将来の不安に対処するために、食いつぶしている。
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