百貨店「華やかなりし20世紀」と現在の残酷な明暗 お歳暮や屋上遊園地など多くの文化で賑わったが…

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一方で都心では、既存の百貨店内や閉店した百貨店跡に家電量販店が入居する例も数多く見られるようになった。

2002年には新宿駅西口の小田急百貨店の別館・小田急ハルク内の複数フロアに、ビックカメラ新宿西口店が開店。

新宿東口の新宿三越アルコット(旧新宿三越)は2012年に閉店し、同年にはビックカメラ とユニクロの複合店である「ビックロ」が開店。その後、2022年ビックカメラ 新宿東口店に。

三越の池袋店は2009年5月に閉店後、ヤマダ電機の店舗になるなど、2000年以降、閉店した百貨店跡は軒並み家電量販店となっていった。

この時期、ビックカメラ 、ヨドバシ、ヤマダといった大手家電店は都心駅前の立地への出店に積極的になり、その物件として閉店後の百貨店建物が、立地、規模ともに絶好だったことが、このような状況へとつながった。

平成後期からの若者のデパート離れ、ネットショッピングの広がりといった事情も、相次ぐデパートの閉店という状況を後押しした。こうした状況は都心ばかりでなく、デパートの郊外店、地方の支店にも共通している。

八王子そごう
閉店を控えた八王子そごう(2011年3月10日、吉野純治撮影)
錦糸町そごう
1997年にオープンした錦糸町そごう。わずか3年後の2000年に閉鎖、現在は三井不動産が「アルカキット錦糸町」を営業中(写真:1997年9月11日、梅谷秀司撮影)
そごう柏店の閉店セレモニーに集まる群衆(写真:2016年9月30日、梅谷秀司撮影)

デパートを支える“3つの柱”

かつては、呉服、紳士・婦人服から宝石、美術品、電化製品、家具、おもちゃ、化粧品と、なんでも販売していた文字通りの“百貨店”だったのがデパート。

現在は店内に海外のラグジュアリーブランドを揃え、外商の富裕層顧客や爆買いの外国人観光客を上客とする高級店化が生き残り策となっているようだ。

そんな中でも多くの客を集めているのが、人気スイーツやお惣菜、酒類、生鮮食品を販売するデパ地下。そして、デパートの化粧品売り場でしか展開されていないメーカーや、高級な製品を美容部員のカウンセリングとともに販売するデパート・コスメ(デパコス)の化粧品売り場だ。

今年夏にリニューアルオープン予定の池袋西武も、ラグジュアリーブランド、デパ地下、デパコスを店の3本柱にするという。

そして、現在生き残っている都心のデパートも、その3部門の売り場の充実に注力しているのは一目瞭然。

令和の世のデパートは、昭和の時代とは別物として存続していくようだ。

鈴木 伸子 文筆家

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すずき のぶこ / Nobuko Suzuki

1964年生まれ。東京女子大学卒業後、都市出版『東京人』編集室に勤務。1997年より副編集長。2010年退社。現在は都市、建築、鉄道、町歩き、食べ歩きをテーマに執筆・編集活動を行う。著書に『中央線をゆく、大人の町歩き: 鉄道、地形、歴史、食』『地下鉄で「昭和」の街をゆく 大人の東京散歩』(ともに河出書房新社)『シブいビル 高度成長期生まれ・東京のビルガイド』(リトル・モア)などがある。

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