政治の停滞が1年も続く台湾が抱える2つの問題 3期目の少数与党政権下における新たな構図

✎ 1〜 ✎ 62 ✎ 63 ✎ 64 ✎ 65
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

実は財政区分法改正の柱である中央財源の地方移転増を求めていたのは民進党も同様だった。2012年、当時野党だった民進党は地方政府への交付金の規模が地方の財政需要を満たせないとして、財政区分法改正を最優先課題と位置づけていた。当時台南市長だった頼清徳総統もまた地方財源の確保を強く訴えていた。

ところが、2016年に与党となって以降は一転して反対の立場を取っている。国民党と民衆党は、こうした与党政治家たちの過去の発言を引用し、民進党の政治的一貫性の欠如を非難した。

総統が指名した大法官候補を反対した民進党

憲法判断をくだす大法官をめぐっても民進党で前代未聞の事態が発生した。

先述の三法改正後に、立法院では頼清徳総統が提案した7名の大法官候補者への任命投票が行われたが、与野党の対立で全候補者が否決される異例の事態となった。多数を占める野党の国民党は7名全員へ反対票を投じ、議席数上キャスティングボートを握る民衆党も6名の候補者に反対票を投じた。

注目すべきは、与党・民進党が頼総統の指名した候補者のうち最終的に民衆党も支持した劉靜怡候補に反対票を投じたことだ。劉氏は立法院の人事審査時に民進党への厳しい批判を展開していた。そのため、民進党立法委員(国会議員)団のリーダーである柯建銘氏が劉氏に賛成票を投じた民進党議員の党籍を剥奪すると表明したのだ。

民進党さえも党利党略を優先し、総統の指名した大法官候補者に反対票を投じたこととなる。2024年10月末に退任した大法官7名の後任が決まらず、在籍大法官数が改正憲法訴訟法の定める定足数10名を下回り、憲法法廷が開廷不能に陥る可能性が高まった。

台湾の立法プロセスでは、立法院可決後の法案は総統と行政院に送付され、行政院は法案実行が困難と判断した場合、10日以内に総統の承認を得て立法院に再議を求めることができる。再議が否決か不実施の場合、総統は10日以内に公告し、公告から3日後に法律が発効する。

関連記事
トピックボードAD