フジテレビジョンの親会社であるフジ・メディア・ホールディングスは1月30日、2025年3月期の業績予想について下方修正を発表した。当初の予想に対して売上高は8.4%減の5482億円、営業利益はおよそ半減の180億円へ修正した。
フジテレビ単体については広告収入の予想を233億円引き下げる一方、営業利益については公表していない。ただ、不動産事業の中核子会社の営業利益見通しは変えていないことなどを勘案すると、フジテレビ自体は営業赤字の見通しとなったようだ。
元タレントの中居正広氏が女性とトラブルになった問題をめぐり、CM停止が相次いだことが影響している。1月27日には10時間を超える謝罪会見を行った(フジテレビ「CM枯渇の懸念」に系列局で募る危機感)ものの、スポンサー企業の多くが広告を差し止めたままだ。
通常、震災などスポンサー事情で広告を差し替えた場合、広告料は支払われる。しかし今回は自社に原因があるため、フジテレビ側は1月分の広告料を請求しないことを明らかにしていた。CM再開が見えない中、業績への悪影響はやはり大きかった。
CM停止はフジテレビの系列局にも広がっている。
フジテレビ系列準キー局の関西テレビは1月22日の記者会見で、大多亮社長(元フジテレビ専務取締役)が「30数社のスポンサーがAC(ジャパン)に差し替え、もしくは提供社名を外すという事が起きている」と説明した。こうした動きは、フジテレビ系列のローカル局でも起きている。
フジテレビの業績悪化は当然として、系列局も経営に大きなダメージを受けることは確実だ。
テレビ局の苦しい台所事情
華やかなイメージと異なり、大半のテレビ局の台所事情は苦しい。日本民間放送年鑑のデータを基に民間テレビ局全127社を「営業利益」が高い順にランキングすると、2024年3月期時点で28社が赤字に陥っており、昨年から5社増加している。フジテレビ系列局では5社が赤字となっている。
営業利益は会社が本業で稼いだ利益を指す。なお、グループ内で放送以外の事業に注力しているテレビ局もあるが、ここではテレビ放送を行う事業会社単体の業績を基準にしているため注意が必要だ(単体での放送外事業の業績は含む)。
上位には、在京在阪のキー局・準キー局が並ぶ。ただし、100億円以上の営業利益を叩き出しているのは1位の日本テレビ放送網(日テレ)のみ。10億円以上は13位までしかない。
フジテレビは4位だが、前年から3割近くの減益だった。フジテレビ系列では21位にテレビ西日本がようやく登場。22位に新潟総合テレビ、23位に準キー局の東海テレビ放送が並ぶ。比較的大きな地方都市を拠点とする3社でも営業利益は5億円台にとどまる。
55位のテレビ宮崎や74位のテレビ大分はフジテレビ以外の系列番組も放送するクロスネット局。番組の組み替えなどによって影響を緩和できるかもしれない。
2024年3月期時点で営業赤字となっているのは岩手めんこいテレビ、山陰中央テレビジョン放送、石川テレビ、仙台放送、関西テレビ放送の5社。関西テレビは大阪を地盤とする準キー局だが、テレビ広告収入の縮小で苦戦している。
「平時」だった前期でこういった利益水準だったことを考えると、今回のCM差し替えなどの影響によって赤字の局数はさらに増え、すでに赤字の局は赤字額が拡大する可能性が高い。
日本民間放送連盟(民放連)の発表によれば、ラジオも含めた地上波放送局全体の2023年度の売上高は前年比0.2%減、経常利益では14.7%の大幅減となっている。フジテレビ問題はテレビ業界全体の経営環境をさらに悪化させるターニングポイントになるかもしれない。
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