辻仁成「人生の後半、子犬と生きる事について」 人間の孤独を癒やしてくれる素晴らしい生き物

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ぼくは本当にその子犬を幸せに生かすことが出来るのだろうか?

自分に問いかけ続けることになる。

【中編はコチラ→】辻仁成「人の一生というのは誰にもわからない」 一緒に住み始めた子犬は今日もぼくを魅了する

犬への深い愛情を感じる言葉

息子はあと一週間ちょっとで成人(フランスでは18歳で成人)になる。ぼくの子育ての第一段階は終わりを迎えようとしている。それなりに頑張ったのじゃないかと思うが、心配なのは、これからの自分である。息子が、どこの大学に行くかはまだわからないけど、もしパリの大学だったとしても、これまでとは違う時間でお互い生きることになるはずだ。その時、ぼくに寄り添うのは、この田舎のアパルトマンで一緒に過ごすのは、もしかすると、その子犬、…かもしれないのである。それはご縁の神様だけが知っていることであろう。

『犬と生きる』書影
『犬と生きる』(マガジンハウス)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

ぼくは金曜日が待ち遠しくて仕方なかった。

そのブリーダーさんは、誰にでも売ることはないんです、と言って電話を切った。

それは、厳しい言葉だけど、犬への深い愛情を感じる言葉でもあった。

その人から譲り受けたいと思った。

さて、どうなることやら。

ともかく、予定を変更して明日の夜にでも、パリに戻らないとならなくなった。

ぼくはそれがどんなに大変であろうと、運命とかご縁を拒まないつもりでいる。

ミニチュアダックスフンドのさんちゃん
ぼくと息子との関係をつないだ、子犬の三四郎。犬はかすがいだね(写真:辻仁成さん提供)
辻 仁成 作家

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つじ ひとなり / Hironari Tsuji

東京生まれ。1989年「ピアニシモ」で第13回すばる文学賞を受賞。以後、作家、ミュージシャン、映画監督など幅広いジャンルで活躍している。97年「海峡の光」で第116回芥川賞、99年『白仏』の仏語版「Le Bouddha blanc」でフランスの代表的な文学賞であるフェミナ賞の外国小説賞を日本人として初めて受賞。『十年後の恋』『真夜中の子供』『なぜ、生きているのかと考えてみるのが今かもしれない』『父 Mon Pere』他、著書多数。近刊に『父ちゃんの料理教室』『ちょっと方向を変えてみる 七転び八起きのぼくから154のエール』『パリの"食べる"スープ 一皿で幸せになれる!』がある。パリ在住。

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