ぼくは本当にその子犬を幸せに生かすことが出来るのだろうか?
自分に問いかけ続けることになる。
【中編はコチラ→】辻仁成「人の一生というのは誰にもわからない」 一緒に住み始めた子犬は今日もぼくを魅了する
犬への深い愛情を感じる言葉
息子はあと一週間ちょっとで成人(フランスでは18歳で成人)になる。ぼくの子育ての第一段階は終わりを迎えようとしている。それなりに頑張ったのじゃないかと思うが、心配なのは、これからの自分である。息子が、どこの大学に行くかはまだわからないけど、もしパリの大学だったとしても、これまでとは違う時間でお互い生きることになるはずだ。その時、ぼくに寄り添うのは、この田舎のアパルトマンで一緒に過ごすのは、もしかすると、その子犬、…かもしれないのである。それはご縁の神様だけが知っていることであろう。
ぼくは金曜日が待ち遠しくて仕方なかった。
そのブリーダーさんは、誰にでも売ることはないんです、と言って電話を切った。
それは、厳しい言葉だけど、犬への深い愛情を感じる言葉でもあった。
その人から譲り受けたいと思った。
さて、どうなることやら。
ともかく、予定を変更して明日の夜にでも、パリに戻らないとならなくなった。
ぼくはそれがどんなに大変であろうと、運命とかご縁を拒まないつもりでいる。

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