辻仁成「人生の後半、子犬と生きる事について」 人間の孤独を癒やしてくれる素晴らしい生き物

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「そんなことはないですが、経験があった方がベターです。犬を捨てる人が増えているので、私たちはそういう人には売りたくないのです」

「もちろんです。ぼくはずっと悩んで、今日、これは何かのご縁だと思って電話をしています。その子をうちで預かることになったら一生懸命、世話するつもりです」

「わかりました。あの、どのようなご職業ですか? つまり、犬を散歩させたり、面倒をちゃんとみる時間があるか、もしくはそれが出来る人が同居しているか、ということです」

子犬を幸せに出来るか

細かい質問だな、と思ったけど、逆に、安心できるブリーダーさんだな、とも思った。

「ぼくは作家ですから、一日中家にいます。犬の世話は間違いなく出来ると思います。同居人は息子だけですが、この子も犬好きで、ずっと彼も幼い頃から犬と暮らすことを夢見ていたんです。犬を育てる環境は整っていると思います」

「それはいいですね。わかりました。とにかく、一度、お越し頂けますか?」

ということで、急な、それも計画的ではない、まさにご縁としか思えないようなタイミングで、犬を飼えることになるかもしれない大きなチャンスが訪れてしまった。

金曜日、フランス時間の午前10時に、パリから一時間ほど離れた隣の県でその子と対面することになってしまったのだ。けっこう、勇気のいる決断だった。

ミニチュアダックスフンドのさんちゃん
三四郎は、見えないものたちから、ぼくを守っているような気がする(写真:辻仁成さん提供)
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