スカイマーク会長が退任直前に語った真実 井手会長に聞く、スカイ17年の軌跡<前編>

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今後の国内需要は人口減少によって細っていく。さらに、LCC(格安航空会社)の台頭も近年目覚ましい。競争が激しくなり、運賃が低下していくのは目に見えていた。そこで目をつけたのが、国際線でA380を飛ばすことだった。

「当初は、アジア市場にチャンスを求めようかとも考えた。ただ、そこでもエアアジアのようなLCCが席巻し始めていた。では、運賃競争にならないのはどこか。それが太平洋線や欧州線のような長距離路線だった。

LCCは1社も入っておらず、大手の航空会社が競争はしているものの、運賃は高止まりしている。国内で大手からシェアを奪ってきたわれわれの成功方程式が通じるのではないか、と。そこでニューヨークやロンドン線を作るという話になっていった」

状況が変わればB737に戻すつもりだった

井手隆司(いで・たかし)●西南学院大学卒。キャセイパシフィック航空、ブリティッシュ・エアウェイズを経て、1998年にスカイマーク社長に就任。2003年に西久保愼一氏が社長に就いて以降は、副会長、会長として整備や運航を指揮(撮影:大澤誠)

「この計画自体、当時は間違っていなかった。利益率も高く、キャッシュフローは一時期400億円ほど持っていた。ドルで稼げれば、為替のヘッジにもなる。実際、大手の場合は国内線が厳しくても、国際線で収支を合わせている。

もちろん、大手と同じ商品ではダメ。実は当初、僕はA380のような4つのエンジンを積む大型機材はコストがかさむので反対だった。しかし、西久保さんは全席をフラットシートにして、それをエコノミークラスとして販売するというアイデアを持ってきた。

こういう斬新な発想が彼のすごいところ。僕が最終的に賛成に回ったのは、ギリギリ顧客がついてくるだろうと思ったから。普通の2~3クラス制では成功するとは思えなかったが、全席エコノミーのフラットシートにすれば、片道10万円、往復20万円が収益的にギリギリの線。大手の窮屈なエコノミーに満足していない人が移動してくるだろうと見込んだ。

最終的に『万が一状況が変わって難しくなったら、B737の体制に戻ろう』という条件付きで役員会を通し、2010年11月に基本合意書を締結した。エアバスとしても、伸び悩んでいたA380の販売を巻き返そうと攻勢をかけていたので、当時としてはいい価格設定にもなった」

※ 後編:スカイマーク退任会長が明かす『失敗の本質』」はこちら

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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