蔦屋重三郎が書店開業!その裏で売れまくった本 恋川春町の「金々先生」いったいどんな作品?
『金々先生栄花夢』(以下『金々先生』と略記)はヒット作となりましたが、現代人で知る人はほとんどいないでしょう。「金八先生なら知っているが」という人が多いかもしれません。
冗談はさておき、『金々先生』は現代において「黄表紙文学の最初の作」「江戸文学史上画期的な作品」「文学史的に大きな意義をもつ」と評されています。
『金々先生』どんな作品?
「金々先生」といっても、寺子屋や藩校の「先生」ではなく「金持ちの粋人」という意味です。ここで、同作の概要をご紹介しましょう。
田舎に住む金村屋金兵衛は、江戸で立身しようと思い立ちます。目黒不動尊(東京都目黒区。瀧泉寺)に立ち寄った金兵衛は、名物の粟餅を注文。粟餅が出来上がるまで、金兵衛はウトウトと居眠りしてしまいました。
寝ている最中に夢を見る金兵衛。なぜか、突然、金持ちの商家の養子・跡取りとなった金兵衛は、湯水のように金銀を使い、放蕩の限りを尽くします。
「金々先生」と呼ばれるようになった金兵衛は、吉原などの遊郭で大散財。それは、家を傾けるほどでした。
金兵衛の養父は、怒り、金兵衛を勘当してしまいます。泣く泣く養家を後にする金兵衛……悲しい悲しいと思っていると、それは夢でした。粟餅が出来上がるまでに見た夢だったのです。
金兵衛は悟ります。「人間一生の楽しみも、粟餅が出来上がる間の夢にすぎない」と。そして、江戸から田舎に帰っていくのでした。これが『金々先生』の概略です。
絵入りの小説である草双紙は元来、子ども向けのものでした。同作品はそれを「大人向けの読み物」にしました。この大人向けに書かれた草双紙が、黄表紙と呼ばれるようになったのです。
また、『金々先生』によって、挿絵(絵画)と文学が合体した「視覚的文学」が成立したとの見解もあります。
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