ロシアがなんだかんだでしぶとさ保つ最大の武器 それは陸軍でも海軍でも、はたまた核兵器でもない

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例えば2004年、ウクライナで反露派の政権が誕生したとき、ロシアは翌年からウクライナ向け天然ガスの価格を1000平方メートルあたり44ドルから232ドルに、一気に上げました。

また、2006年にはウクライナへの天然ガス供給を一時停止した結果、ここを通るパイプラインの目的地であるハンガリーで供給量が40%減、フランスとイタリアでも25%減になるなど、ヨーロッパ全体に大きな悪影響を与えました(ロシアとウクライナのガス紛争には、ウクライナ側の料金不払い、無断ガス抜き取り、汚職なども大きな原因の1つとされています)。このように、ロシアはユーラシア大陸の国々を自らに依存させ、「反抗すれば天然ガスを値上げするぞ」と脅すのです。

ガス漬けになったドイツ

しかし、一連のロシアの行動に対して多くの国が不信感を抱く中で、ドイツだけはロシアにより接近しました。2005年にはロシアとドイツを直通するパイプライン計画「ノルドストリーム」に調印。ところが、これに対して国内外では猛反発が巻き起こりました。当時のポーランドの外相は、この計画が「1939年のドイツとソ連によるポーランド分割に匹敵する愚策である」と批判しました。

ドイツはその後も止まることなく、ロシア産天然ガスを欲しがりました。特に、2014年のロシアによるクリミア併合から1年余りしか経っていなかった2015年に、ドイツは2本目のノルドストリーム建設を発表しました。これにはアメリカさえ制裁をちらつかせるほどの反発を招きました。

しかし、ドイツとしては、原発からも石炭からも脱却する野心的な環境政策を貫徹するつもりであり、この期に及んで安くて環境に優しいロシア産の天然ガスを捨てるわけにはいきませんでした。また、自動車をはじめとした工業製品を安く作り続けるためにも、安いロシア産天然ガスは必要不可欠でした。

2022年からのウクライナ戦争を機に、さすがのドイツもロシア産天然ガスからの脱却を図りましたが、思うようには進みませんでした。例えば、アメリカやフランスは、ロシアをSWIFT(国際決済網)から締め出す制裁を科すことに賛成しましたが、ドイツを含むロシアに天然ガスを依存する国々は反対しました。

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