欧州にバチカン市国より「小さな国」設立の可能性 アルバニア首相が「新国」設立を国連総会で発表

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ティラナ中心部
奥に写るのがティラナ中心部の集合住宅。一般市民の住宅環境はあまりよくない(写真:筆者撮影)

降ってわいた新国発表に、一般市民だけではなく、当のベクタシ信徒の間ですら困惑の声が広がっている。

北マケドニア出身のアルバニア人女性はこう語る。「あまりにも突然発表されて、ベクタシ信者すらまだ状況をのみ込めていないかもしれない。『よくわからないけど、国がもらえるというなら、まあもらっておくか』くらいの気持ちかもね。設立の意図もよくわからないし、すべてが宙ぶらりんになっていて、変なシチュエーションだね」。

「この国家を望んでいません」という声も

また、アメリカの大手掲示板サイトRedditでは、このニュースが発表された直後から賛否両論、さまざまな意見が飛び交った。

「新たな観光地が生まれるかもしれない」「アルバニアの宗教的寛容性が国際的に認知されるいい機会になる」「宗教的マイノリティのための自治区を作ることに賛成」という意見もあるが、コメントの多くはこのアイデアに難色を示している。

同サイトのユーザーは、「私たちベクタシの人間も、特にこの国家を望んでいません。タックスヘイブンとして利用される可能性もあるし、今まで存在しなかった宗教間の亀裂が生じているように感じます」とコメントしている。

あるアルバニアの批評家は、このニュースが政治的腐敗から国民の目をそらさせるための目くらましかもしれないと述べる。

しかし、これら多くの意見のどれもが臆測の域を出ないのは、誰からも理にかなった説明がなされていないからだ。

新国家設立には多くのハードルがある。そもそも他国から承認されるのか、どのように法律を制定するのか。しかし一番の難関は、国民の声にどう向き合っていくか、なのかもしれない。

草薙 由莉 ライター

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くさなぎ ゆり / Yuri Kusanagi

1996年生まれ。青山学院大学卒業後、出版社に就職し美術の教科書の編集に携わる。その後、東欧・中欧の文化に興味を持ち、2023年よりハンガリー、ブダペストの大学院へ留学。文化人類学を学ぶかたわら、現地の文化についての記事を執筆している。世界100カ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員。

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