ソ連国家は「科学的無神論」を公認のイデオロギーに定めた。科学ならば、理性を基準に無神論を国民に納得させるという啓蒙が活動の中心になるはずだ。しかしソ連国家は「科学的無神論を信じよ」という宗教的アプローチを取った。ロシア共産主義はロシア正教の伝統から生まれた現象だ。
ロシア正教を含めキリスト教は表面的には諸宗教間の対話を掲げ、寛容なように振る舞う。しかし本質においては排他的だ。ほかの宗教との併存の必要性を心の底から信じているキリスト教徒は、エキュメニズム(現在分裂している諸教会が「イエス・キリストが救い主である」というキリスト教の原点に立ち返り、再一致しようとする運動)の実践に関与するか、この分野の神学的訓練を受けた、ごく一部の人々にとどまる。
したがって、キリスト教徒の大多数は排他的なのである。これはキリスト教徒だけでなく、ユダヤ教徒やイスラム教徒にも共通して見られる現象だ。共産主義者も反宗教を看板に掲げる共産主義という宗教を信じているので排他的なのだ、とベルジャーエフは考える。
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