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「ロシア正教は一種の国教」とプーチンはみる 佐藤優の情報術、91年ソ連クーデター事件簿93

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レーニンら共産主義者は、自由な社会を建設することを目標にした。ソ連社会は人間の善(よ)き資質の力ではなく、統制、強制、組織の力によって共産主義社会を実現しようとした。ロシアのプーチン大統領も、自由で民主主義的な社会を建設すると約束している。しかしそれはアングロサクソン流の私人の恣意的行為を自由と見なすような利己主義的な社会ではない。秩序と国家主権を基本に据えた自由と民主主義だ。

共産主義者の根底にあるニヒリズム

ロシア国家の一員として国民が自覚を持ち、自分に与えられた場で、能力と適性に応じて国家と同胞のために働くことが真の自由であり民主主義なのだとプーチン氏は考える。帝政ロシア、ソ連、現下ロシアの秩序観、国家観には通底するものがある。

レーニンの共産主義政府はポベドノスツェフの君主制政府とまったく同様に権威主義的、専制的であった。その人間不信と現世生活へのニヒリスト的態度から、レーニンは逆の結論、極端な革命主義的結論をひきだした。極端な革命主義の結論も、極端な反動主義の結論も、同様にひきだすことはできるけれども、レーニンにとってもポベドノスツェフにとっても、現世の生活が空虚で悪であることに変わりはなかった。

ポベドノスツェフのように、レーニンもまた私生活では悪人でなかった。かれには少なからず優しい心、隣人に対する人間的な態度があった。レーニンも子供や動物を愛した。かれは異端審問者ではなかった。(ニコライ・ベルジャーエフ〈田中西二郎/新谷敬三郎訳〉『ベルジャーエフ著作集 第7巻 ロシア共産主義の歴史と意味』白水社、1960年、212ページ)

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