他社の採用活動(Recruiting)を見聞きすることによって生まれる引力である。
入社3~5年目になると、仕事はある程度落ち着いてくる。学生時代の友人と久しぶりに会ったとき、仕事が充実している友人や、たくさん稼いでいる友人の話を聞き、うらやましく思うこともあるだろう。いわゆる「隣の芝生は青い」ように見える状態だ。
今の仕事に不満があるわけではないものの他社が輝いて見え、より魅力的な環境を求める気持ちが湧いてくる。
若手社員から直接「A社の給料はこれくらいなのに、どうしてこの会社は……」などと愚痴をこぼされることもあるかもしれない。こうしたときは「よそはよそ! うちはうち!」と説き伏せたくなるものだが、そこは口をつぐんで、若手社員の心境変化に意識を向けてほしい。
他社と待遇を比較している時点で、求人情報に触れているのは間違いない。その後、本格的に転職活動を始めると、他社の話は口にしなくなる。そして、ある日突然、退職宣言を受けるのだ。
今の仕事にマンネリ(One-pattern)を感じ始めることで生まれる引力である。
入社して3~5年も経つと、おおよその仕事は一周し、仕事の習熟度も高まっているはずだ。上司が「まだまだスキル開発や成長の余地がある」と考えていても、若手社員自身は「もうこの会社で学ぶことは何もない」と感じ、同じペースで同じ仕事を続けていくことに疑問を覚えるようになる。
若手社員が「マンネリ」を訴えてきたとき、上司としては「まだまだ面白い仕事はあるぞ」と言いたくなるものだが、その言葉は昨今のZ世代には響かない。なぜなら、Z世代は「もっと面白い仕事がしたい」と思っているわけではなく、「このままでは自分のキャリアが危ない」と思っているからだ。
このような意識の違いを埋められないと、若手社員はやがて離職を決断するだろう。
"3つの引力"への対応策
会社や上司が直接的に3つの引力をコントロールするのは難しい。会社や上司にできることは、引力に引っ張られすぎないように導くことだ。一般的に、会社への帰属意識が低い若手社員ほど、引力の影響を強く受けてしまう傾向がある。
3~5年目の若手社員は、もう見習いの時期ではない。見習いマインドから脱却させ、組織の一員としての責任感を持ってもらわなければいけない。ひと言で言えば、プロフェッショナル化を促すということだ。筆者は、「Private引力」「Recruiting引力」「One-pattern引力」の頭文字を取って「PRO化」と呼んでいる。
若手社員のプロフェッショナル化(PRO化)を促すためにはどうしたらいいだろうか。上司に心がけていただきたいポイントを3つ紹介したい。
実際は成長しているのに「まだまだ力が足りない」と自分を卑下している若手社員もいれば、まだまだ成長の余地があるにもかかわらず「もう学べることはない」と慢心している若手社員もいる。いずれも、自己認知と他者認知にギャップがある状態だ。
このような場合、上司は部下に自己認知と他者認知のギャップを示し、改善すべき点を認識してもらう必要がある。とはいえ、この時期の若手社員は上司の言葉を素直に受け入れられないこともある。そのようなときは、「360度サーベイ」を使うのが効果的だ。
「360度サーベイ」とは、上司だけではなく、同僚や部下を含めた複数名が、日々の職務行動を評価するための調査のこと。1人の上司の意見は、その上司の主観に左右されるため、どうしても部下の納得感は低くなる。だが、360度サーベイを使って周囲の意見を伝えれば、自分を客観視しやすくなる。
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