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買収禁止命令に激怒、日本製鉄が米大統領を提訴 理不尽な米国政府にも引かない強気の勝算は

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米国で1月3日に出された大統領命令。日本製鉄によるUSスチール買収が「米国の国家安全保障を損なう恐れのある行動をとる可能性があると信じるに足る証拠がある」と記されている(ホワイトハウスのウェブサイトからキャプチャー)

たとえ訴訟が長期化したとしても「(買収は)諦めない。諦める理由も必要もない。これが最善の道であると確信している」と橋本会長は強気姿勢を崩さない。

原則として、大統領命令を覆すことはできない。ただし、「憲法上の基本権の侵害など重大な違反が指摘できる場合には、行政訴訟の提起で結果が覆る可能性がある。しかし、ハードルは非常に高い」と米国で企業法務の経験が豊富な蒲野綜合法律事務所の蒲野宏之弁護士は指摘する。

日本製鉄・USスチールが米国政府相手に提起した訴訟はこれに相当し、条件を変えずに買収を実現するために取り得る唯一の手といえる。裁判では、買収の禁止が国家安全保障の観点から不合理であることに加えて、本来あるべき結論が歪められたことを証明しなければならない。難しい裁判になることは間違いない。

なお訴訟の結果、再審査が認められれば、その時点での政権で指名された審査委員のもとで審査がなされることになる。時の大統領の方針についても注視する必要がある。

アメリカ市場は海外戦略の要

日本製鉄はこれまで、内需拡大が望めないなか、海外で生産能力の拡大を進めてきた。現在の粗鋼生産能力は国内4700万トン、世界6600万トン(30%以上出資会社の生産能力を合算)。後者をさらに1億トンまで引き上げる目標をかかげている。

海外戦略では、需要の伸びが期待でき、かつ中国メーカーによる影響を受けにくい市場を吟味してきた。米国は人口増が続く数少ない先進国市場であり、日本製鉄が得意とする高級鋼材の需要が豊富だ。安価な外国鋼材を通商政策で締め出しているため、インサイダーになれればメリットは大きく、逃せない市場だ。USスチールの買収は、米国で約2000万トンの生産能力を手にし、技術的なシナジーも発揮できる千載一遇の機会だ。

一方で、訴訟も含めた買収以前の手続きの長期化は、事業戦略の遅れに直結する。USスチール買収を諦めず、米国政府に啖呵を切った日本製鉄。社運をかけた大型買収の行方は当面見通せそうにない。

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