──戦争概念に軍事戦争、経済戦争、そして情報戦争とかけるウエートに変遷があるのですね。
人類の歴史を見ると、長年軍事という暴力で相手に言うことを聞かせてきた。冷戦は経済力で旧ソ連を倒したという意味で経済戦争だった。ここでの戦争とは、国対国の利害が対立したときに話し合いでは追いつかないので、力をもって自分の意思を強要することだ。この力をもってするのはクラウゼヴィッツの『戦争論』にも書いてある。その後、トフラーが3つの力に注目した。暴力に加え、おカネと知恵だ。言い換えれば軍事力、経済力、情報力になる。冷戦時代はまさに経済の土俵の上で資本主義が勝った。太平洋戦争も軍事力の裏にあった経済力が死命を決した。過渡期だったわけだ。
軍事戦争から情報戦争へ
──21世紀は情報戦争の時代?
21世紀は知恵の戦いが深まる。つまり情報戦争だ。情報戦争では、情報を通じて相手が当方に都合のいい決心をしてくれれば、勝ったことになる。国対国が暴力に訴えるのは非常に難しくなっている。その代わり、経済力を使ったり情報力を使ったりして自分の意思を強要することが普通に行われていて、米国はその最たるものだ。経済制裁は一種の戦争行為なのだ。経済力でやってみて、それがダメなら情報で挑む。いつ何時、軍事力、経済力、情報力が錯綜した本当の複合戦争が起こるかわからないのが今日の世界だ。
米国はいちばんそうしかねない。しかも米国は今までもルールを何回も変えている。怖い国だ。当分は敵に回さないほうがいいと思う。
──安全保障法制は戦争の概念が軍事で止まっていませんか。
20世紀までの国際法の範疇でものを見て、もともと日本は世界の軍事の常識からかけ離れている体制になっている。むしろ新しい安保法制なら困らない国が情報戦争を仕掛けていて、だまされている気がする。情報戦争において軍事戦争が前提ではナンセンスなものもありうる。
軍事戦争は国際慣習法が明文化されていて、勝った者の独裁になりがちとはいえ、一応縛りはある。ところがインテリジェンスには、そもそも国際法はない。
しかも、サイバーを使ってのインテリジェンス行為にステージが上がり、ますます秘密裏に攻撃ができる。インテリジェンスはサイバーと親和性が高い。情報戦争でも国際法上で明文化の動きがあるが、肝心なところは議論が分かれていて結論がなかなか出ない。むしろインターネットを米国に野放図に使わせたくない、中国やロシアが国際条約作りに乗り気だ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら