写楽や歌麿を世に送り出した蔦重のスゴい仕事術 NHK大河「べらぼう」主人公に学ぶ仕事のコツ

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狂歌連(狂歌が趣味の武士たちのサークル)や吉原連といった集いにこまめに参加するなど、日頃からさまざまなところに顔を出すことは、蔦重にとっては重要な任務の1つでした。

張り巡らせたネットワークは、蔦重の財産であると同時に、いわば大事な商売道具。人々と密な関係を構築していくことが、将来的な大物作家の確保や、販路の調達へとつながっていったのです。言うなれば、日常的に根回しを行っているようなものです。

たった1つのコネクションを持っていることが、夢や野望の実現につながったということは、往々にしてあるもの。蔦重はそれをよく知っていたからこそ、日夜、人々と活発に交流し、自分の夢やプランを口にしていました。

蔦重が亡くなった後の蔦屋から、『椿説弓張月(ちんせつゆみはりづき)』に代表される、曲亭馬琴と葛飾北斎がタッグを組んだ大ヒット作が刊行されました。これらは当時、『南総里見八 犬伝』よりも高い人気を誇りました。この見事なコラボレーションも、蔦重の強靭な ネットワークから生み出されたものと言えるでしょう。

蔦屋の礼をわきまえ、方々に気を回す人柄

そして、人脈を広げていくときに忘れてはならないのが、礼儀、そして相手を慮る気持ちです。

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たとえば、自分がずっと会いたいと思っていた人に、人を介して会わせてもらったとき。もし紹介者が同席しなかったのなら、憧れの人に会ったその日のうちに、紹介者に一報を入れるようにしましょう。

紹介してくれた人は、「うまくいったかな」と気を揉んでいたかもしれません。そうでなかったとしても、その人のお蔭でつながったご縁ですから、ことの成り行きを報告するとともに、改めてお礼を伝えるのはとても大切なことです。それが礼を尽くすということなのでしょう。

自由な江戸っ子風情の蔦重ですが、彼自身、そういった礼節をとても大切にする律儀な人でした。礼をわきまえ、方々に気を回す人柄だったからこそ、みんなが彼に惚れ込み、「ともに仕事がしたい」と集ってきたのです。

車浮代 時代小説家、江戸料理文化研究所代表

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くるまうきよ

浮世絵をはじめとする江戸文化、江戸料理に造詣が深く、さまざまな媒体を通じて江戸文化の魅力を現代に伝える。1964年大阪生まれ。大阪芸術大学卒業後、東洋紙業でアートディレクター、セイコーエプソンでデザイナーを務める。その後、第18回シナリオ作家協会「大伴昌司賞」大賞受賞をきっかけに会社員から転身、映画監督・新藤兼人氏に師事し、シナリオを学ぶ。現在は作家の柘いつか氏に師事。ベストセラーとなった小説『蔦重の教え』(当社/双葉文庫)のほか、『Art of 蔦重』(笠間書院)、『居酒屋 蔦重』(ORANGE PAGE MOOK)、『蔦屋重三郎と江戸文化を創った13人』(PHP文庫)など、著書多数。2024年春、江戸風レンタルスタジオ「うきよの台所 ─Ukiyo’s Kitchen─」をオープン。江戸料理の動画配信も行っている。

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