12兆円の算定が説得力を持つかどうかは、主観によるところもありますので、算定方法の適切さや誠実さといったことを論じるつもりはありませんし、「(12兆円は)インパクトを狙った盛りすぎた数字」と言うつもりもありません。
ただ、数字が12兆円と巨大なわりには、意外にアバウトな算定だなという感をもっていますが、これも私の主観です。
ちなみに余談になりますが、経営コンサルティング会社で、スタッフやマネージャーがこのような算定で数字を出してきたときに、(上位職から)OKが出る率は高くはないように思います。
「御社」は対応が必要なのか?
さて、企業としては12兆円もさることながら、1社あたりの損失額である「2億1900万円」のほうが気になるところでしょう。
EMC社の調査の企業の損失額の内訳では「従業員の生産性の低下によるものが約4割」「製品開発の遅延が3割」「顧客からの信用・信頼の低下で2割」となっています。
これを見れば、「直接的なキャッシュ損失は少なそうだから、対策の有無は費用対効果で判断する」という企業もあるでしょうし、「損失額は2億円程度と割り切って特に対応をしない」という企業もあるでしょう(リスクを受容するということもリスク管理の考え方のひとつです)。
ここは企業のリスク管理の考え方次第でしょう。
先ほど「12兆円の算定は意外にアバウトな感」と述べましたが、この認識はDXの支援にも関わる経営コンサルタントの間では、レポートの発表当初からありました。
一方で、システム会社やITコンサルティング会社(さらにはメディア)では、12兆円という数字をマーケティングや営業などに積極的に活用してきました。
今でも「2025年の崖の12兆円の問題もありますので、DXとしてレガシー化している基幹系システムの再構築を」といったアプローチを見かけます。
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