また、北陸新幹線、しなの鉄道と並行する国道18号線沿いに、町役場、警察署、大手スーパー等の商業施設があり、さらに中軽井沢とその南部には、美術館などの施設が多い塩沢がある。
つまり軽井沢町は、別荘地としての歴史、観光客やインバウンド需要、町民の暮らしが重なっているのだ。交通渋滞やタクシー不足が起きやすい土壌が、あるといえる。
そんな中で、地域交通の利便性を向上していくのは、どうすればいいのか。
持続性のあるプロジェクトになるか
先の「軽井沢タクシー供給強化プロジェクト」で、タクシーの供給状況がデータとして可視化されたことで、西武などの路線バス、町が事業者に委託する町内循環バス、しなの鉄道、そして実証中のオンデマンド交通といった既存交通との関係性も検証しやすくなったといえるだろう。
国がこれまで掲げてきた「公共交通のリ・デザイン(再構築)」は、地方創生を改めて強化する意向を示している石破政権のもと、その重要性を増すことは間違いない。
だが、筆者がこれまで全国各地を取材している限り、公共交通のリ・デザインに対して「理想的なイメージ像」を描き過ぎて実動がともなわなかったり、新しい試みが「実証のための実証」で終わってしまったりと、持続性を欠く事例が少なくない。
そうした中で、軽井沢町はタクシーアプリを初導入するという、ゼロベースでのタクシー事業体系の変革を機に、町に関わるさまざまな団体が本気で連携することで実現した、成功事例だと感じる。
今後、公共交通のリ・デザインのさらなる横展開が進む中で、「データと人の声がうまくマッチングした現実解」が、軽井沢町から導き出されることを期待したい。
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