「クリパの翌日に」死んだ愛猫の腸内にあった異物 イヌや鳥も…年末年始にペットの死が多い理由

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愛犬が亡くなった悲しみが消えるわけではありませんが、「自分の不注意で死なせてしまったわけではない」とわかり、飼い主さんは少し安心されたようでした。

これは、がんで亡くなったというケースでしたが、過去に僕は、尖った鳥の骨や焼き鳥の竹串を飲み込んで命を落としたイヌを何度も見ています。

飼いイヌが誤って危険なものを飲み込まないよう、飼い主さんは気をつけてあげてくださいね。また、様子がおかしいと感じたら、すぐに動物病院に連れていくよう心がけてください。

様子がおかしくなる原因はさまざまですが、病気の場合、基本的に早い段階で治療を施せば、命が助かる可能性は高まります。

病理解剖は時間との戦い

動物の死因を明らかにするための解剖、すなわち病理解剖は、時間との戦いです。動物の体は、死ぬとすぐに死後変化が始まり、本来の病変(病気によって組織などに起こる変化)が隠されたり、死後変化と病変との区別が難しくなったりします。

つまり、死んでから時間が経つほど、死因の特定は困難になっていきます。そのため、遺体が持ち込まれた際には、できるだけ早急に病理解剖を始めなくてはなりません。

これが僕のような獣医病理医のつらいところで、休日や夜間に何の前触れもなく遺体が持ち込まれ、暦も時間も関係なく病理解剖が始まるということがめずらしくありません。家族と季節の行事を過ごせないこともしばしば。妻と子どもたちには、いつも帰りが遅くなってしまってごめん、という気持ちでいっぱいです。

病理解剖を通じて読み取った死因をみなさんと広く共有できれば、避けられる死もたくさんあります。常々抱いているそういう思いが、僕を年末年始の解剖に向かわせています。

大切なペットが亡くなってしまうと、楽しいはずの年末年始が一転して悲しいものになってしまいます。動物たちにとって特に危険が多いこの時期、不慮の事故が起きないよう、飼い主のみなさんはペットたちの身の回りに十分に気を配ってあげてくださいね。

中村 進一 獣医師、獣医病理学専門家

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なかむらしんいち / Shinichi Nakamura

1982年生まれ。大阪府出身。岡山理科大学獣医学部獣医学科講師。獣医師、博士(獣医学)、獣医病理学専門家、毒性病理学専門家。麻布大学獣医学部卒業、同大学院博士課程修了。京都市役所、株式会社栄養・病理学研究所を経て、2022年4月より現職。イカやヒトデからアフリカゾウまで、依頼があればどんな動物でも病理解剖、病理診断している。著書に『獣医病理学者が語る 動物のからだと病気』(緑書房,2022)。

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大谷 智通 サイエンスライター、書籍編集者

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おおたに ともみち / Tomomichi Ohtani

1982年生まれ。兵庫県出身。東京大学農学部卒業。同大学院農学生命科学研究科水圏生物科学専攻修士課程修了。同博士課程中退。出版社勤務を経て2015年2月にスタジオ大四畳半を設立し、現在に至る。農学・生命科学・理科教育・食などの分野の難解な事柄をわかりやすく伝えるサイエンスライターとして活動。主に書籍の企画・執筆・編集を行っている。著書に『増補版寄生蟲図鑑 ふしぎな世界の住人たち』(講談社)、『眠れなくなるほどキモい生き物』(集英社インターナショナル)、『ウシのげっぷを退治しろ』(旬報社)など。

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