スタバ「賛否両論の紙ストロー」廃止が意味する事 環境への配慮と消費体験をうまく共存させる試みだ
時代の変化に即した施策は、時代の流れとしても取り入れることは必要にはなってきているものの、消費者からすれば、そのような「大きな」ことを意識するより、もっと自分たちの満足度を優先してほしい気持ちはいつだってある。
いわば、「建前(理想)」と「本音(現実)」がぶつかり、そしてアメリカの場合は、この「本音(現実)」が反動のように大きくなっている現状がある。
スタバが得意としてきた「本音と建前の同居」
こうした出来事を鑑みるに、今回のスタバの決断はかなり穏当なところに落ち着いたのではないかと思える。
というのも、「紙ストローやめて、完全プラスチックストローに戻します!」という単純な顧客満足度だけを優先した反動ではなく、バイオマス素材ストローという別の道に進んだからである。ある意味での「中道」というか、顧客の「本音」と企業としての「建前」を同居させるのがうまいな、と思う。
もともとスタバは、こうした「本音と建前を同居させる」ことに優れた企業だった。
そもそも同社の拡大のきっかけは、イタリアのカフェバル文化に心酔した社員ハワード・シュルツが「アメリカでも本物のコーヒー文化を!」という「意識高い」理想を掲げて店舗を始めたことにある。
ただ、そうした「意識高い」ブランディングに忠実でありすぎると、どうしても「顧客の要求」との間にズレが生じてしまう。初期のスタバは、イタリアを再現するためにメニューはイタリア語、店内にはオペラがかかっていたが、これでは注文の仕方もわからないし、大音量のオペラには「うるさい」という苦情が来た。
そこからシュルツは「本物の体験を味わえる」というブランディングは掲げたまま、しかし一方ではその内実は、顧客の要望に合わせた店舗を作り上げていく。
例えば、同社が「コーヒーの質」にいかにこだわっているのかを訴求しているにもかかわらず、その主力商品が「フラペチーノ」であることは、その代表例だ。
もともとイタリアにはこんなに甘いドリンクはない。その点で、まったく「本物」ではない。けれど、シュルツはこうした甘いドリンクが女性を中心とした顧客に求められていることを知り、貪欲にメニューに取り込んでいった。一方で「コーヒーへのこだわり」は訴求し続け、「本物にこだわる」ブランディングは捨てていない。
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