斎藤氏への世論「批判から熱狂」に変わった"本質" 斎藤知事「告発→失職→復活」までの経緯(下)
ところが自民党の市議から「リベラルカラーの稲村氏と政策が合わない」と反対意見が出たうえ、自民党県連が決定した「斎藤氏以外の候補を応援」の方針にも抵抗。一部は斎藤氏の支援に回った。
それでも告示日前には、稲村氏は斎藤氏に15ポイントほどの差を付けていた。この時、地元関係者数人に情勢を聞いたところ、いずれも「たぶん勝ちますよ」と呑気な回答が戻ってきた。だが危機は迫っていた。稲村氏の陣営には選挙に長けた人物がいなかったのである。SNS戦略では最初から、斎藤知事に敗北していた。
途中で選挙担当者が替えられたが、もう間に合わなかった。「稲村氏は外国人参政権に賛成だ」などのデマも流されたが、これへの対応も不十分だった。投票日直前に優劣は逆転。稲村氏の敗北の大部分は、”オウンゴール”によるものといえる。
作られるようになった「民主主義」
2013年に解禁されたネット選挙は、2024年に大きく変貌した。それは4月の衆院東京15区補選や7月の東京都知事選で見ることができる。ネットで注目された候補の演説には人が押しかけ、その様子を配信すれば、再生回数が稼げた。
動画配信のマネタイズの仕組みを利用して、配信者募集の広告まで登場した。AIで観衆を作り上げることにより、熱狂も演出できるようになった。まさに「作られた民主主義」の実現だ。
だが、視聴者側はそうした現実には気を留めない。「人間は見たいものに関心を示す」という事実を突いて兵庫県知事選に出馬したのが、NHK党の立花孝志党首だった。「自分の当選は求めず、斎藤氏の当選を目指す」と公言した立花氏の登場で、斎藤知事はますます勢いづいていく。
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