この家に住んでいた10代後半の少女は、長らく父親と2人で暮らしていた。両親は早くに離婚。親権は父親に渡り、母親は実家のある九州地方に移った。
父親は現役で働いていたものの、病に倒れ入院。その間は近くに住んでいる親戚が少女の生活をフォローしていたが、部屋の状況までうかがい知ることはなかったのだろう。
入院してから約1カ月後、父親は他界。通夜なり、葬式なりを済ませ、母親が8年ぶりに元夫と暮らした部屋を訪れてみると、服にゴキブリが付いたままの娘が中から出てきた。家中を虫が飛び回り、想像を絶するような酷い状態だった。
母親はバルサンを何度も焚き、1人でゴキブリの駆除をしていたが、とてもじゃないがやりきれない。家具やゴミの処分もあるし、家賃の支払いも続いている。そうして、イーブイに片付けの依頼をしたというのがことの顛末だ。
「ゴミ屋敷」は子どもにとって悪影響なのか
娘が1人で住んでいた1カ月足らずでは、どんな生活をしていてもここまでゴキブリが湧くようなことは考えられない。死人に口なしだが、原因はほぼ間違いなく亡くなった父親にあった。
ゴミ屋敷に住む子どものことを考える際、文直氏と話していると度々こんなテーマが話題に上がる。
“ゴミ屋敷は子どもの成長に悪影響を及ぼすのか”
一般的な感覚からすれば、言うまでもなく悪影響かもしれない。ただ、現場を見ている文直氏は少し違った見方をしている。
「シングルマザーでゴミ屋敷になってしまう家庭を多く見てきましたが、そういう家庭でも子どもはちゃんとお母さんのことが大好きなんですよ。お母さんも決して育児放棄をしているわけではない。ただ、片付けられないだけで、子どもに愛情はきちんと注がれているんです」
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