新しい塾から告げられたのは厳しい言葉だった。
「これは、死に物狂いでやらないと横浜英和にはたどり着けませんよ」
前の塾では横浜英和を本命に、チャレンジ校も決めようという話が出ていたほどだっただけに、母親もさすがに驚いた。しかし、この転塾はこころちゃんにとっては“正解”だった。
「こっちに変わってすごく楽しい!」
こころちゃんのやる気と笑顔が戻ったのだ。転塾してすぐに声をかけてくれた女の子と仲良くなったようで、クラスの雰囲気もすこぶるいいという。少人数クラスのため、講師の目も細かく届く。子どもが質問をしなくても、理解できていないなと講師のほうで判断し、頻繁に声をかけてくれる。次第に偏差値は50台後半で安定し始めた。これならば、受かるかもしれない。親子ともに自信を取り戻していった。
合格発表で迎えた最悪のシナリオ
こうして迎えた受験本番。一度は絶望的と思われた本命、青山学院横浜英和を中心に、4校に出願した。2月1日午前には青山学院横浜英和を受験、午後には偏差値40台前半の学校の特進クラスを受験することにした。
2日目は、田園調布学園の午前入試を選択、午後には2月1日の一度では受からなかったときのことを考えて再び青山学院横浜英和、3日目は午前にカリタス女子中学、午後に3回目の青山学院横浜英和、というスケジュールを組んだ。
成績が安定してきたとはいえ、青山学院横浜英和は安全とは言い切れない。それでも1日午後はこころちゃんの偏差値と比べると10ポイント以上も下の安全校の受験を組み入れたため、合格がもらえると踏んでいた。
2月1日の受験を終えた後、母子はちょっとした安心感に包まれていた。
「今日はよく頑張ったから、帰りに温泉に入って帰ろうか」(母親)
「うん! それ嬉しい! そうしよう」(こころちゃん)
合格発表までは時間があるため、これまでの頑張りをねぎらい、明日からの英気を養うために親子は近くの温泉施設でのんびり過ごして帰宅した。
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