それでも、海野さんは地元四国の、香川県に戻る。
「理由はふたつあって、ひとつは香川に可能性を感じているからです。今年の盆に帰ったとき、久しぶりにいくつか観光地に行ったのですが、欧米系の旅行者がたくさんいて驚きました。
こんな小さな県の、まったくアクセスが良いとは言えない瀬戸内の島にもたくさん人が集まっていて、香川には豊かな観光資源があるんだなと実感しました。
実際、僕も一度県外に出てみると、瀬戸内海の景色の素晴らしさや、高松市内にある名勝・栗林(りつりん)公園のありがたみに気づきましたね。香川は穏やかな波間に島々が浮かぶ海に縁どられ、自然豊富、文化もあります。
東京に比べたら規模は小さいですが、買い物の利便性も悪くない。僕の地元だからというだけでなく、誰が来ても住みやすいんじゃないでしょうか。
結論として、僕は地元が大好きなんです。神戸、東京の良さを知ったからこそ、より地元を誇れるようになりました」
香川に戻ったら家業を継ぐことにプラスして、インバウンド関連のビジネスのサポートなどにもチャレンジしてみたいという海野さん。その際には現在勤務している企業のマーケティングのノウハウが役立ちそうだ。
「会社ではまだまだ新米で、先輩のサポートの立場ですが、貴重な経験を積ませてもらっています。多様なクライアントに伴走させてもらうことで、制約のなかで成果を出す力を鍛えられている実感があって、将来のやりたいことのためにも役立つと感じていますね」
困難な未来でも、背負う準備はできている
彼にはもうひとつ、四国に帰る理由がある。
「両親の存在です。僕はめちゃくちゃ両親と仲が良いんですよ! ひとりっ子で、いとこもほとんどいないので両親との結びつきがすごく強いんです。こんなことを言ったら親に怒られるかもしれないですが、30歳ほど年齢が違うのに、どこか友達のような距離の近さがあります。だから親の歩んできた道をなぞることに、疑問がないんですよね」
近年は友達のような親子が多いという。今の若者の親世代といえば70年代、80年代に生まれた世代だろうが、戦中・戦後・バブル期などの世代の親に比べて、文化的には子ども世代と大きな断絶がない。親子で共通の文化的背景を持っているが故に、距離が近く感じるのだろうか。
「趣味の面でも、両親の影響を強く受けています。飲食店巡りや音楽鑑賞。他にもファッションを父親と共有しています。僕、家族で着るTシャツを自分でデザインしたこともあるんですよ。それくらい家族としての一体感を大切にしています」
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