自己放任が招いた「孤独死」この夏の過酷な現実 "死の現場"が映し出す社会のいびつな側面
孤独死の7割を占めるのが、セルフネグレクトだ。セルフネグレクトとは自己放任ともいい、自分自身のケアができなくなることを指す。ゴミ屋敷化や、医療の拒否、自分で世話し切れない数のペットの多頭飼いなどだ。それは、いわば緩やかな「自死」で、自分自身の心と体を緩やかに殺していく行為でもある。
夏の暑さは、そんなセルフネグレクトに陥った人たちに、容赦なく追い打ちをかける。例えばゴミ屋敷の中で寝起きしているとゴミが熱を持つため、熱中症のリスクがぐんと高まる。
社会的孤立が背景
私は、これまで数え切れないほどの孤独死現場に立ち会ったが、幾度となくやるせない気持ちに襲われた。それは、故人の苦悩を感じることが多かったからだ。
孤独死やセルフネグレクトの背景には社会的孤立の問題が横たわっている。私が孤独死現場を追い続けるのは、この社会的孤立の部分で、死者たちがつねに私自身と無関係ではないと思えるからだ。
私は、いわゆる毒親家庭で育ち、幼少期から母に肉体的、精神的なありとあらゆる虐待を受けてきた。元引きこもりでもある。さらにロスジェネに当たり、新卒で勤めたのは長時間労働とパワハラが横行するブラック企業だった。
そんな生きづらさを抱えていた私は、社会からいつドロップアウトし、孤立してしまうかわからない、彼らと同じ孤独死予備軍だったといっていい。
今年と同じような灼熱(しゃくねつ)の暑さが続いた数年前、九州地方に住む私と同世代の40代女性は、SNSを通じて私に助けを求めてきた。
女性のアパートを訪ねると、天井まで達するほどの、なだらかなゴミの山ができていた。彼女は典型的なセルフネグレクトに陥っていた。エアコンは壊れていて、室温は40度近く。そんな過酷な環境で寝起きをしていたかと思うとしばし絶句した。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら