(第29回)製造工程なき製造業、日本は方向付け不定

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EMSの典型例は、アップルのアイフォーンやアイパッドなどを富士康科技集団(フォックスコン)が生産しているケースだ。同社は、EMSの世界最大手である台湾の鴻海精密工業(ホンハイ)の中核子会社だ。アップルの他、デルやヒューレット・パッカードなどの大手PCメーカーにマザーボードなどのパーツを供給している。ソニーやノキアの携帯電話、マイクロソフトのゲーム機Xboxなども生産している。

従業員は18歳から25歳を中心に、およそ80万人と言われる。そのうちの54万人が中国人だ。富士康の深セン龍華工場では、従業員の勤務が1日15時間、月間残業が80時間超で、月収はわずか27ポンド(現在のレートでは、3300円弱)だと英紙デイリー・テレグラフが10年5月に報道し、問題になったことがある。

この例でも分かるように、EMSでは自社ブランドでの生産は行わない。複数のメーカーから受託して、電子機器の量産を行うのである。設計の主体は、依頼側にある。ただし、製品の設計を受注先に代わって行ったり、資材の決定を行ったりするケースもある。

発注側から言うと、工場設備を持たず、製造要員のコストを掛けずに、デザイン、設計、マーケティングなどに集中できる。こうした企業を、ファブレス企業という。アップルはその典型だ。

OEMで成功した企業の例として、船井電機がある。同社は、台湾から部品を仕入れ中国の工場で組み立て生産を行っている。北米でフィリップスブランドを用い、小売り最大手ウォルマート・ストアーズを通じて販売するビジネスモデルが軌道に乗った。32型液晶テレビは4万円を切る水準で、ソニーなどより3割ほど安いという。北米での液晶テレビの出荷台数が、1位のサムスンとシェア差0・6ポイントになるまで増大した。

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