2015年に開発がスタートした鴻蒙は、当初は自動運転システムや産業用オートメーションなどIoT(モノのインターネット)向けの組み込みOSとしての用途を想定していた。
ところが2019年5月、アメリカ政府がファーウェイをエンティティー・リスト(訳注:アメリカの安全保障や外交政策上の利益に反すると判断された企業等のリストで、事実上の禁輸対象)に追加したため、ファーウェイは(同社製のスマホに搭載していた)グーグルのアンドロイドを利用できなくなってしまった。
ファーウェイは苦肉の策として、独自開発の鴻蒙を一般ユーザー向けに転用することを決断。2019年8月に最初のバージョンをリリースしたが、スマホ用のOSとして十分な機能を持つとは言い難かった。
そこで同社は(一般ユーザーの利便性を確保するために)妥協策を採った。鴻蒙のプログラムにオープンソース版のアンドロイドのコードを取り入れ、ネイティブアプリとアンドロイド用アプリの両方を実行できるようにしたのだ。
短期的には互換性留保も
その後、ファーウェイは鴻蒙の機能向上やネイティブアプリの開発環境整備、必須アプリの(アンドロイド版からの)移植などを地道に進め、満を持してアンドロイドとの決別に踏み出した。ハーモニーOSネクストの開発者向けプレビュー版の発表以降、同社は中国のアプリ開発大手との交渉を積極的に重ね、より多くのネイティブアプリの開発を働きかけている。
現時点では、ハーモニーOSネクストのエコシステムの充実度はアンドロイドやアップルの「iOS」にまだまだ及ばない。さらなる改善を続けるには、アプリ開発者をいかに引きつけて好循環を形成するかがカギになる。
スマホ業界の関係者の多くは、ファーウェイがハーモニーOSネクストへの完全移行に一定の時間をかけ、短期的にはアンドロイドとの互換性を留保するかどうかにも注目している。
同社は新型ハイエンドスマホ「Mate 70」シリーズを近く発表すると予想されている。同機種はユーザーの利便性に配慮し、ハーモニーOSネクストの搭載と同時に以前のバージョンの鴻蒙にも切り替えられるようにするとの見方がある。
(財新記者:劉沛林)
※原文の配信は10月23日
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