2000億円を動かした移籍代理人の超絶仕事術 世界のサッカーを動かすメンデス氏を直撃

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⑤ 仕事と家族の時間を両立する

意外だったのが、仕事だけでなく、家族を大切にする、ということだ。彼は携帯電話を3つ持っており、ひっきりなしにかかってくる。年中地球のどこかを飛び回っており、多忙極まりない。

しかしそこにはつねに家族の姿がある。たとえば今夏、移籍市場の真っ只中に、彼は結婚式を行った。クリスティアーノ・ロナウドや有名クラブ会長たちなど、サッカー界の大物がそろった式はニュースになったが、普通はこんな移籍市場の重要局面である8月に結婚式は行わない。しかし日程の都合で、プライベートを優先させたという。

忙しい中でも家族との時間を大切にしているという(撮影:豊福 晋)

「私は毎日仕事をしています。エージェントの仕事は会社員とは違い、土日も休みではない。私に週末はありません。しかしだからといって、家庭での時間を削ることはしない。仕事と家庭の両立、これを念頭に置いて過ごしているからです。たとえば出張には妻を連れて行くことが多いですし、海外出張に家族同伴で行くこともある。交渉をして、それが終われば家族との時間も確保できます。それはそれで大変ですが、少なくともそう努力することが大事なのです。家族とうまくやっていくためにも、私はできる限りのことをしようと思っています」

 ⑥ 仕事や取引相手に優劣をつけない

メンデスと話していて感じるのは、対話能力や、頭の回転の速さ、語学力など仕事面での能力だけでなく、他人を思いやれる、人間的な懐の深さだ。

これほど有名で多忙であるにもかかわらず、一つひとつの案件をしっかりとこなし、優先順位もつけない。人に優劣をつけず、ネームバリューで序列をつけることもない。メンデスとの話が終わり、オフィスの廊下に出ると、待合室の椅子に数人の列ができていた。待っていたのはどこか企業の社長と、ブラガの会長アントニオ・サルバドールだ。サルバドールと話すと、彼もメンデスの人間性を絶賛していた。

リスボンの闇市で物品を売買していた少年時代

これにはメンデスが育った環境も影響しているのかもしれない。彼の家は決して裕福な家庭ではなく、少年時代はリスボンの闇市で物品を売買し、夏にはビーチに出かけ母親が手作りした鞄や帽子を売って過ごした。

一つひとつの仕事に真摯に取り組む。選手との関係も同じだと彼は言う。

「移籍において重要なのは代理人ではありません。あくまでもいちばん大事なのは顧客、つまり選手です。私は自らの利益を追うのではなく、何よりも選手を守らなければならない。私がエージェントとして成功できているとするのなら、その秘訣は一件一件の仕事に真摯に取り組んだ結果でしょう。そして、正直であること。それが選手やクラブの信頼を生んでくれます。関わってきた案件には、最後まで責任を持って取り組む。それがクリスティアーノ・ロナウドの移籍であろうと、無名の若手の移籍であろうとです」

来年1月、再び欧州移籍市場が開く。その時も話題の中心にいるのは、この男であるのは間違いない。

豊福 晋 ライター

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とよふく しん / Shin Toyofuku

1979年生まれ、福岡県出身。2002年よりライターとして活動開始し、イタリアへ移住。現地で中村俊輔、中田英寿らを取材しながら各媒体に執筆。スコットランドでの4年間を経て、2009年からスペイン、バルセロナ在住。4カ国語を駆使し欧州中をまわり取材する日々。サッカーを中心に「ナンバー」、「ワールドサッカーダイジェスト」誌などに寄稿。

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