大学受験に有利なだけが中高一貫校じゃない 「真のゆとり教育」がそこにはある
灘中学で行われていた『銀の匙』の授業を知っている人も多いだろう。橋本武教諭による名物授業。たった1冊の小説を、中学の3年間をかけてじっくり読む。「超スロー・リーディーング」などといってメディアでも話題になった。
たとえば物語の途中、凧揚げについての描写があれば、実際に凧を手作りするところから追体験する。難産という言葉が出てきたときには、自分の生まれたときのことを両親に聞いて作文させる。これぞ「真のゆとり教育」ではないだろうか。
中学生のうちに目先の1点2点を気にしなくていい分、「真のゆとり教育」を行うことができて、しっかりと学力の土台を作ることができる。家を建てることに例えるなら、基礎工事にじっくりと時間をかけるようなもの。
また、中学生のうちにどんなふうに教えれば、高校になってから伸びやすいのかを、中高一貫校の教師は体感的に熟知している。高校受験での成果を気にしなくていいので、自信を持って「急がば回れ」的な指導を実践できる。
だから、中高一貫校では、本格的に受験勉強が始まったときに、高い学力を達成しやすいのだ。
多感な時期を高校受験につぶされない
中学3年の夏休みに海外語学研修にでかける中高一貫校も少なくない。習いたての英語を実際に試してみる機会にもなるし、何より自分の将来を考えるうえで、海外にも目を向ける機会になる。
そのほか、山登り体験、海浜学校、ボランティア体験など、普段の生活では味わえない経験を積むような機会を、ほとんどの中高一貫校がこの時期に用意している。
思春期という多感な時期は、将来の人生観、生き方を左右するという意味で非常に重要な時期だ。たくさんの人と出会い、たくさんのものを見て、感じて、たくさんの経験を積み、たくさんの感動や葛藤を味わう中で、自分の価値観や自分らしさに気づいていく。
勉強に身が入らなくなることもある。大人が提示する価値観に疑問を感じ、思い切り反抗してみることもある。一見面倒くさいそれらの経験がすべて、後の肥やしになる。
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