大学受験に有利なだけが中高一貫校じゃない 「真のゆとり教育」がそこにはある

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そんな時期に紙と鉛筆だけで世の中を学ぶことは、思春期の少年少女の精神的な発達上、本来好ましくないことは誰でも直感的に理解できるのではないだろうか。思春期こそ、特に反抗期の頃こそ、子供たちは旅に出て、冒険して、たくさんの感動を得て、たくさんの失敗を経験しなければならない。そうやって人生の基礎を、しっかりと、広く、作っておかなければいけない。

そんなときに、机にかじりついているだけではもったいない。そういう意味で、多感な時期を高校受験につぶされないというのは、中高一貫校に通うメリットの中でも特に大きなものである。

高校受験があることが、日本の教育の最大の欠点

逆にいえば、日本の学校制度の最大の欠点はそこにある。人生の中でももっとも多感な時期を、受験勉強に奪われてしまう。

たくさんの感動と葛藤を味わい、自分らしさを築いていくべきときに、旅に出られない。内申書が気になるから、思い切り大人に反抗してみることもできない。

15歳の春に同学年のほとんどの子供たちが一斉に受験をして進路を決めなければいけない、現在の日本の学校制度は、子供の精神的自立に欠かせない反抗期を、漂白してしまう作用がある。

それであとから、今の若者たちには「夢がない」だとか「精神的に自立できていない」だとか「自分らしさがない」などと勝手なことを言うのが今の世の中。ほとんど卑怯ではないか。

親の立場からしてみても、日本の学校制度は大変だ。反抗期には、ただでさえ子供は親のいうことを聞かなくなる。本当ならいろいろな話をして、アドバイスを授けたいところ。しかし親がよかれと思ってしたアドバイスに、子どもが過度に反発するということもある。そんなややこしいタイミングで、将来を大きく左右するかもしれない高校受験に、親子で取り組まなければならないのだ。

親子関係のもつれのせいで、勉強に力を発揮できない受験生も多くいるだろう。15歳の春に高校受験という大イベントがあることは、子供にとっても親にとっても間の悪いことなのである。

ただし、私立中高一貫校に通うにはおカネがかかるという現実もある。通学可能圏内に中高一貫校が存在しない地域も多い。中高一貫校という選択が、誰にとっても身近な選択肢になれば望ましい。もし選択可能な恵まれた状況にあるのなら、中高一貫教育を選択することに損はないと言いたい。

おおたとしまさ 教育ジャーナリスト

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Toshimasa Ota

「子どもが“パパ〜!”っていつでも抱きついてくれる期間なんてほんの数年。今、子どもと一緒にいられなかったら一生後悔する」と株式会社リクルートを脱サラ。育児・教育をテーマに執筆・講演活動を行う。著書は『名門校とは何か?』『ルポ 塾歴社会』など80冊以上。著書一覧はこちら

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