「非ミニマリスト」の89歳、モノを捨てない住まい方 "終活"とは逆行でも「いらないものなんてない」

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友人たちを招き、夜遅くまで食事や語らいを楽しんだり、ウッドデッキをステージにして、知人の演奏家によるミニライブを開催したりと、にぎやかな思い出も数多くある。

山小屋
山小屋でのミニライブの様子(写真:小森祥子さん提供)

だが、90歳を目前にした今は、その頃とは違った楽しみ方をしている。

普段、共同生活を送っているおでんせでの喧騒や同所の理事長という役割から距離を置き、1人きりで過ごす数日間は、何にも代えがたい愛おしい時間だという。

山小屋に到着すると、まず深呼吸。「私の恋人」と呼ぶモーツァルトのCDを聴きながら、ゆっくりと山小屋の生活を堪能する。

「私は1人の時間が大好きなんです。自分のことだけをあれこれ考えていられるから。散歩や木工、料理をしながら日々のことを振り返って、失敗しちゃったかな、別のやり方もあったかな、などと反省したり、今度は何をしようかなって新しくやってみたいことを考えたり。

じっくり考えて決めたいことも宿題のように山小屋に持ってきて、頭の中をリセットしてからあれこれ考えを巡らせて、結論を出したりします」

小森さんの「住まい遍歴」

ここ数年、若者を中心に「ソロ活」がブームになっている。ソロ活とは「ソロ(単独)」と「活動」を組み合わせた造語で、1人で好きな場所に出かけ、好きなことをして過ごすこと。

小森さんは20代の頃から、旅行や登山などをソロ活で楽しんできた。旧ソ連や北欧、ヨーロッパ、アメリカ、アジアなど多くの国を訪れ、毎年のようにお気に入りの山々に登っていた。

小森祥子さん
さまざまな場所での思い出は写真に収め、部屋のあちこちに飾っている(筆者撮影)

特にソロ活の1人時間が味わい深いものになってきたのは、51歳で幼稚園を退職してからだという。

「私から“先生”という肩書が取れて、小森祥子という素の自分に戻る。身一つになった解放感は大きなものでした。朝、起きて天気がよければ車で遠出したり、旅行は行先だけ決めて出発したり。

出かける先々で、美しい風景もご飯のおいしさも自分のペースで味わえますよね。大好きな山歩きのとき、可憐な草花を見つけたら心行くまで眺めていられる。同行者がいると、そうはいきません(笑)」

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