「事業撤退→年2000万個」チーズデザート成功の訳 ひとりの社員の熱意が、会社を動かした

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若手のうちは仕事の一部しか見られない企業も多いなか、そこは大きな差別化につながっているに違いない。

また、開発者はみんな片山さんの開発イズムを受け継いでいるそうで、味には一切妥協しない。それは、六甲バターの「おいしければ応援する」という姿勢や、「お客様の喜ぶ笑顔を想像しながら、喜んでいただける価値を創造し続ける」とうフィロソフィーにも通じている。つまり、新しい製品であっても、そこにおいしさがある限り、社員の共通認識の線上にあり、協力してもらえるのだ。

海外での評価とプラントベースの商品開発

QBB製品は、2017年から海外への輸出がスタートしている。意外にも、従来のチーズよりチーズデザートが評価されているそうだ。海外にはこんなカテゴリーの商品がなく、新しい食べものとして喜ばれているという。

と言っても人気の理由は国によってさまざまだ。台湾では、「ヘルシーデザート」として若い女性に人気があり、国によっては、「子供の栄養価の高いおやつ」という位置づけで買われているところも。販売国は、台湾、韓国、香港、シンガポール、ベトナム、タイ、カナダの7カ国に広がっている

今後については、環境の変化で乳資源の確保が困難になる可能性や、食の多様化への対応を見据えて、プラントベース(植物性)のチーズを目指した商品開発も進めている。2025年開催の大阪・関西万博では、これを使ったメニューを提供する予定だそうだ。これからもきっと、まだ世にないチーズ製品を生み出していくことだろう。

シュレッド
プラントベースのチーズを目指して開発されたシュレッド(写真提供:六甲バター)

六甲バターの歩んできた道のりは、「チーズ革命」と呼ぶにふさわしい。開発先導型の社風、プロセスチーズに特化した専門性、妥協なき味へのこだわり。そして、部門間の垣根を越えた連携、消費者の声に耳を傾けるマーケティング戦略、アメーバ経営による全社員の経営者意識の醸成。これらが複雑に絡み合い、独自の企業文化を形成している。

しかし、六甲バターの真の強さは、これらの要素を単に持っていることではない。時代の変化に柔軟に対応しながら、常に新しい価値を生み出し続ける力にある。

先の見えない時代だからこそ、六甲バターのような「革新を恐れない」企業文化が、ますます重要になってくるのではないか。チーズというごくありふれた食品から、時代を先取る新たな価値を創造し続ける六甲バター。地方の中小企業だからと決して侮れない、経営や組織づくりの本質を教えてくれる。

前編はこちら:QBB「チーズの種類多すぎ」を生む組織づくりの秘訣 「開発先導型」と「消費者起点」で描く成長戦略

中編はこちら:QBBベビーチーズ「飛ぶように売れる」棚作りの妙 年間2億本以上!国民的プロセスチーズの"勝因"

笹間 聖子 フリーライター・編集者

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ささま・せいこ / Seiko Sasama

フリーライター、時々編集者。おもなジャンルはホテルビジネス、幼児教育、企業ストーリー。編集プロダクション2社を経て2019年に独立。ホテル業界専門誌で16年間執筆を続けており、ホテルと経営者の取材経験多数。「週刊ホテルレストラン」「ダイヤモンド・チェーンストアオンライン」「FQ Kids」などで執筆。企業のnote発信サポーター、ブックライターとしても活動。大阪在住。

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