「事業撤退→年2000万個」チーズデザート成功の訳 ひとりの社員の熱意が、会社を動かした

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六甲バターがはじめてデザート事業を開始したのは1982年。カップ入りの「レアチーズケーキ」を発売したのが皮切りだ。非常に評判となり、当時学生だった片山さんはこのデザートのとりこになったそうだ。そして、「自分もぜひ開発に関わりたい」と、大学卒業後に六甲バターの門を叩く。最終面接では自らチーズケーキを焼き、役員たちに「食べてください」と配ったというからその熱意たるや。

「ちょっと変わった子やけど、面白いなあ」

役員たちをそう唸らせたという逸話は、今も社内で語り継がれている。

カップ入りのレアチーズケーキ
1982年に発売された、カップ入りのレアチーズケーキ(写真提供:六甲バター)

強い熱意を買われて入社した片山さんは、1988年、レアチーズチルドデザートの後発として誕生したカップデザート、「ベイクドチーズケーキ」の開発に携わる。2007年には改良版を発売し、売れ行きは順調。夢が叶った瞬間だった。

ところがその矢先、青天の霹靂となる出来事が起こる。社内的な事情で、デザートの販売が一旦ストップしてしまったのだ。そして間もなく、カップ入りデザート事業からの撤退が決定した。

嘆き悲しんだ片山さんは、「カップ入りのデザートでなくても、ほかの方法でチーズケーキの味わい、おいしさを提供し、お客様に喜んでもらえる方法はないか」を考えはじめる。そこで目をつけたのが6Pチーズだった。

「丸い形は、ホールのチーズケーキに。1ピースは、それをカットしたようにも見える。それなら、これをチーズケーキにできるのでは……」と考えた片山さん。6Pチーズと同じ設備を使えば、初期投資が少なくて済むという狙いもあった。

開発部長に直談判すると、「それだけ言うなら」と許可が出る。しかし、開発は簡単ではなかった。6Pチーズはアルミ箔にチーズを高速充填するので、糸を引くと、外側を汚してしまうリスクがある。そうならない性質と、おいしさ、なめらかな口溶け、上品な味わい。相反する条件をクリアしなければならなかったからだ。

ベイクドチーズケーキ
片山さんが入社後開発に携わった「ベイクドチーズケーキ」(写真提供:六甲バター)

味も製造ラインも、とにかくテストしまくった

そこから片山さんは1年半もの間、毎日テストに明け暮れる。約110種類の配合を考え、味も妥協せず、納得いくまでテストを繰り返したそうだ。そして、その中から厳選した30種類を製造ラインでもテストした。製造現場の手間はかかったが、誰もが片山さんの熱意に動かされ、「みんなでやっていこう」と一致団結したという。

こうして2009年に完成したのが、「チーズデザート マダガスカルバニラ風味」だ。味はクリームチーズをベースに、「バニラの最高峰」と呼び声高いブルボンバニラを使って濃厚なチーズケーキを表現した。

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