「医師で作家」が精神崩壊寸前で気づいた"幸せ" 「勝ちまくった人はいずれ精神に変調をきたす」
たとえば、適切な人に助けを求める能力。相談したらきちんとお礼をする能力。相談できるような友達を作る能力、などだ。もしかしたら僕は、チーム戦のほうが得意だったかもしれない。とても幸運なことに僕の周りには僕を引っ張り上げようとしてくれる人や、僕が幸せになるように努力してくれる人がいた。どれほど恩返しをしてもしたりない人が、僕の人生には何人も登場する。
「勝ち」にこだわる看板をおろした
そんなふうにしてこれまで100戦のうち50勝50敗くらいで、僕はなんとかやってきた。
そうして年を重ね、40歳を過ぎる頃にこんなことに気づいた。
「勝ち負けにこだわることは、何かを成し遂げるうえでとても大切なことだ。でも、異常なまでにこだわると精神が破壊される。この世で勝ちまくった人はいずれ精神に変調をきたす。そこまでして勝ちたいかどうか、自分の頭で考えて決めなければ」
僕の30代は、勝つことが多かったと思う。
医者として専門医の資格を次々に取り、技術を高めた。作家としては初めての本を出し、小説を書いて出し、ドラマにもしてもらい、『泣くな研修医』シリーズはベストセラーになった。医学書も書いた。
でも、あまりに忙しくて自分の生活なんてどこにもなかった。
そうして僕は、そこに家事育児という仕事が加わり、心が壊れる寸前までいった。あまりに多くのことをしたから、いつどうやって休んでいたのか思い出せない。そうして気づいた。
そうか、「勝ち負け」と「幸せ」はまったく別のものなのだ、と。
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