「医師で作家」が精神崩壊寸前で気づいた"幸せ" 「勝ちまくった人はいずれ精神に変調をきたす」

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共通試験(僕らのころはセンター試験と呼んだ)で70%程度しか得点できずに浪人してしまい、「90%以上の点を取らなければ医学部には入れない、つまり医者になれない」という現実を突きつけられた。

18歳のその春の日、僕は腹をくくった。

やるしかない。医者を諦めないのであれば、この頼りない頭脳でいくしかない。人の倍の時間が必要なら、倍の時間をかけて勉強するしかない。

僕は、その日から、とにかく長い時間を勉強に費やした。電車ではもちろん、歩きながら、トイレで、風呂で、食事をしながらずっと勉強をした。それでも医学部に入るのに2年も余計にかかった。

パニック、泣き出し、吐く人も続出の国家試験

でも、大学に入ってからの勉強は楽しかった。何度、夢に見たかわからない、その字を書くだけで心拍数が上がる医学というものを、学べるのだ。

覚えが良くなったわけではないけど、大学では僕なりに一生懸命学んだ。医学生のうちの無数の試験たちは、相変わらず暗記力を要求されるものだったから、苦戦はした。

6年の最後である医師国家試験の勉強は、18年経った今でもたまに夢に見る。恐怖に泣き出すやつ、パニックになって夜に彼女を鹿児島から呼び出すやつ、試合中にトイレで吐くやつ、いろんなことがある3日間の試験だった。

ここまでの試験は、100メートル走とか水泳自由形みたいな、まったくの個人競技だ。社会人になって、僕の場合は医者になってからは、個人だけではどうしようもないことが多くなる。友人が「社会人はチーム戦」と言ったが、本当にそうだ。ここには暗記力以外の能力が必要になる。

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