つまり、海外進出は大企業では90年代末にはかなりの程度まで進展していたが、中堅、中小ではあまり進んでおらず、比較的最近になってから生じている事象だ。このため、海外移転の能力がある企業は、今後、海外生産を増やすことで円高に対応してゆくだろう。とくに系列内の企業はそうであり、系列がそのまま海外に移転することになるだろう。
なお、以上で見たのは「進出したか否か」の区別である。すでに進出した企業が海外生産比率をさらに引き上げてゆくという変化はありうる。また、海外進出企業の比率は、輸送機械で高いなど、業種によって差はあるが、それほど大きな差ではない。資本金100億円以上で見ると、どの業種も40~60%程度だ。
円安政策は零細企業を助けるのか?
以上の状況は、経済政策にも大きな転換を要求する。
第一に、零細工場の淘汰という形での製造業の縮小は、高度成長期の二重構造問題とは性質が異なる問題である。今後、中堅以上の企業の海外移転が進むと、現地調達を増やすので、国内企業への発注はさらに減る。こうして、零細企業の経営が行き詰まり、廃業に追い込まれる事態が増えるだろう。これに対処するには、従来の中小企業対策とは異質の政策が必要になる。
中堅、中小企業の場合には、系列内の企業は、これまで経験がなかった海外での事業展開が必要になる。系列外企業は受注減に直面するが、必ずしも悪いことではない。前回述べたように、グローバル的水平分業への転換の契機とすることが可能だ。