欧米Z世代に広がる「ガラケー」ブームは来るか? デジタルデトックスを求めレトロ端末が注目

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バービーフォンもThe Boring Phoneも欧米では大きな話題となった。では日本にも同様のブームは来るのだろうか? 今回紹介した2つのモデルは4Gに対応しているため、日本の通信キャリアの電波をつかむことはできる(ただし電波法上そのまま使うことはできないが)。海外メーカーのスマートフォン愛好者などは海外から端末を輸入して日本で使ったりするが、日本の若い層がバービーフォンの話題に反応し、それらを輸入して日本で使うというムーブメントは見られない。

日本で脱・スマホ生活は難しい

日本でもガラケーはいくつか販売されている。たとえば2024年7月にはオルビックから「Orbic JOURNEY Pro 4G」が販売された。しかし、それ以外となると2023年以前のモデルが大半であり、機種名に「かんたん」などが付くように、年配者向けの製品が大半である。Z世代を意識した製品はほとんどない。

デザインに凝ったモデルとしてはP-UP Worldの「Mode1 RETRO II MD-06P」があるが、見た目はガラケーながら中身はAndroidスマートフォンという、いわゆる「ガラホ」である。LINEなどSNSアプリを入れることも可能であり「通話用途とSNSでのメッセージ」のような使い方に向いている。

もちろん、日本でもSNS上での誹謗中傷などトラブルが増えており、「脱・SNS」「脱・スマホ」の動きが無いわけではない。しかし、日本では欧米のようなガラケーブームは起きにくいだろう。それは、スマートフォンが社会インフラの中に完全に組み込まれつつあるからだ。

欧米では日本より、はるか先にクレジットカードによるキャッシュレス化が進んだが、日本はそれに遅れたぶん、スマートフォンを中心としたキャッシュレス化が進化した。交通系ICカードに加えQRコード決済の普及が広がり、スマートフォンは支払いツールとしておサイフの代わりになっている。デジタルデトックスをしたくとも、日常生活でスマートフォンが無ければ買い物すらできない状況になりつつあるわけだ。

この傾向はほかのアジア諸国でも同様であり、平均所得の低い東南アジアですらスマートフォンの普及率は若者を中心に高い。日本やアジアでは「ガラケーとクレカがあれば何もいらない」とはならず、逆に「スマホがあれば生活できる」環境が整っているのだ。

iPhoneの普及率が高く中古品の流通量が多い日本では、Z世代はガラケーよりも中古のスマートフォンへ流れる動きが進むかもしれない。スマートフォンを新しい機種と古いモデルの2台持ちし、古いモデルの低画質なカメラで写真を撮ることもブームになりつつある。日本での懐古ケータイブームはガラケーではなくスマートフォンを中心とした動きになるのかもしれない。

ガラケーブームは海外だけの動きか(筆者撮影)
山根 康宏 携帯電話研究家・ジャーナリスト

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やまね やすひろ / Yasuhiro Yamane

香港在住。石油化学企業の製造・研究・国際貿易業務を経てからフリーのジャーナリストに転身。中国および海外のスマートフォンや通信事情に精通。取材範囲は自動車、スマートシティー、インダストリー4.0、リテール、デザイン、材料まで幅広い。年の大半を海外市場の市場調査および海外展示会・発表会取材に当てており、脚で稼いだ情報を武器とする。大手IT系メディアに定期的に記事を執筆するほか、海外通信事情などの講演も積極的に行う。

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