いや、本当にすごいんです。うちの社員は。
すごいやつなんているわけないやん、と鼻で笑っていた自分が恥ずかしいぐらいに、木村石鹸の社員は優秀だったんです。それは僕が家業に戻って得た実感です。
皆とにかくまじめです。言われたことはきちんとやるし、言われていないこともやっている。誰に指示されるわけでもなく、各自が段取りや準備をすませている。急遽トラブル対応で作業する手が足りなくなったら、営業も開発の人間も自分事として手伝いに駆けつける。
ふつうなら専門業者に頼むであろうことも、専門外だと投げ出さずに、ひとまず自分たちで作ったり考えたりする。だから、知識がぐんぐんと深まっていく。もちろん問題がないわけではないのですが、本当にすごいんです。
皆が「ここは自分の会社だ」と思って働いているんです。これはあたりまえのことのように思えますが、意外とそうではありません。
この意識は、個々人の能力やスキルが優秀であれば生まれるというわけではなく、親父が長年にわたって無条件に寄せてきた社員や会社への「信頼」や「期待」が生み出しているもののように思えたのです。
ただただ社員を信じていた"親父"
こういった「企業文化」を根づかせるには、経営理念とか社訓みたいなものも重要だとは思います。でも木村石鹸の場合は、経営理念や社訓そのものよりも、経営理念や社訓を本気で大事にしている親父の方を見ているように感じました。
そう、社員の多くは、親父を喜ばせたい、悲しませたくない、そんな想いが強かったんじゃないかと。
親父は何か高尚な戦略を立てるわけでもなく、リーダーシップを発揮するわけでもなく、ただただ社員を信じ、期待していました。
だから、いつも「うちの社員は、皆、すごいんやぞ」と言い続けていたし、何か経営的にマズそうなことが起きても、「うちの社員ならなんとかできる」と、何の根拠もないことを自信満々に言ったりしていました。本気で、無条件に社員を信じていたのです。
人は、誰かに本気で信頼され、期待されれば、それに応えよう、裏切らないようにしたいと思うものなのではないでしょうか。
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