仕事というものは組織や部門をまたがって、「チェーン(鎖)」としてつながることによってはじめて価値を生む。
しかし、概念としてはそのことを理解しても、実際には「縦割り」の意識が強く、「組織の壁」「部門の壁」で情報の断絶が起きたり、意思疎通がうまくいかなかったりする。
企業が成長し、関わる従業員が増えてくると、当然のことながら、組織は肥大化し、専門化、機能分化していく。部門や個人の仕事はより明確に分けられ、ほかとの「境界線」がはっきり規定される。
拠点も地理的に分散し、コミュニケーションは形式的になり、人間同士の「触れ合い」はどんどん薄くなる。
「ひとつの会社」でありながら、一体感は希薄になり、「見えない境界線」が生まれる。この「見えない境界線」が「分断」につながるのだ。
20年前から「つながる力」は高まっていない
仕事はつながってこそ価値を生むにもかかわらず、「自分、自部門の業務しか知らない」「他部門の業務は無視し関心がない」といったことが現場に蔓延すると、その現場には「タコツボ」が至るところにできてしまう。
タコツボ化すると、「自分さえよければいい」ということから、連鎖の視点が欠如する。その結果、組織としての全体最適は追求されずに、部分最適の集合体に陥ってしまう。
タコツボ化は「縦割り」意識が強いので、「前工程は後工程を意識しない」「後工程も前工程の業務品質に問題があっても文句を言わない」といった「分断」が現場を支配してしまう。
20年前に出版した『現場力を鍛える』でも、「タコツボ」をぶち壊すことの重要性や自律的組織のネットワーク化について言及している。
しかし、20年後の現実を見れば、現場の「つながる力」は決して高まっているとは言えない。
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