セブン「賛否両論ドーナツ」に見るコンビニの転換 便利なだけでは戦えない時代に突入している

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このように見ていくと、各社がそれぞれの「強み」を強化し、そこに「選択と集中」している様子がうかがえるのだ。

コンビニが目指すべきは「空間価値の創出」?

最後に、個人的な展望を書いておく。

ドンキにはなぜペンギンがいるのか (集英社新書)
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各社の戦略の中で個人的には「場所」としてのコンビニの価値を押し出す方向が良いのではないかと思っている。

地方などに行ってみれば、その駐車場で地元の若者がたまってダベっている……なんて姿を見かける。どこか「コミュニティ」の場所として、コンビニは機能しているのだ。芥川賞を受賞した村田沙耶香『コンビニ人間』では、コンビニで働く主人公を通して、そこで生まれる奇妙なコミュニティが描かれるが、それぐらいコンビニは「便利な店」だけでない「場所」としての価値を持っていると思う。

実際、これは筆者の夢想ではない。ECなどが発達し、欲しいものはネットでも購入できるようになった現在、コンビニの一つの価値は「なんでも買える」だけでなく、「人々が集う場所」を作ることにあるのではないか。その意味で、その真価は今後「空間価値の創出」になっていくのではないか。

とはいえ、まだまだ高齢者層はECなどに慣れていないから、「モノを買う」場所としてのコンビニの役割が大きいのも確か。ただ、長期的なスパンで見たとき、ECの浸透は必至で、そのとき、リアル店舗としてのコンビニは、その空間価値を追求する方向に向かっていくのが良いのではないだろうか。

セブンのドーナツについては、今のところ賛否両論という印象だ。だが、この再挑戦こそが、コンビニが「便利な店」だけでない、「場所」としての価値を重視する姿勢の表れだと感じる。

「リアル空間」としての価値を持つコンビニがどうなっていくのか、現在の動向も踏まえて注視していきたい。

谷頭 和希 都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家

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たにがしら・かずき / Kazuki Tanigashira

都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家。1997年生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業、早稲田大学教育学術院国語教育専攻修士課程修了。「ゲンロン 佐々木敦 批評再生塾 第三期」に参加し宇川直宏賞を受賞。著作に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』 (集英社新書)、『ブックオフから考える 「なんとなく」から生まれた文化のインフラ』(青弓社)がある。テレビ・動画出演は『ABEMA Prime』『めざまし8』など。

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