世界で最も独立性の高い中央銀行はどこか 意思決定の形式や公開度合いは千差万別

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BOEでは公式の経済予測に対する責任がMPCにある。同予測は「インフレ報告」で発表される。BOEがさまざまな見解を出せば民間部門が混乱しかねないので、この公式予測は民間の見方に影響を与えるのに役立つ。が、集団浅慮に陥るリスクもある。

2008年の世界金融危機が示したように、集団浅慮は、中銀が銀行監督者を兼ねている場合、特に危険になりうる。06年、金融の安定に関する報告書を発表した各中銀(諸中銀の大半)は、自国の金融制度は健全と結論づけていた。

当時、中銀のアナリストが誰一人としてクレジットとレバレッジが大きく膨らんでいたことを懸念していなかったはずはない。国際決済銀行(BIS、諸中銀の組織)のエコノミストらは数々のリスクを明らかにしていた。それでも中銀内部からは反対意見が聞かれなかった。各中銀は政府からの独立性を維持したかもしれないが、内部的には公式見解から離れるのは困難だった。

もちろん、厳しい組織の規律とさまざまな思考を促すこととのバランスを取ることは必要だ。中銀外部の人間はさまざまな出版物の行間から政策メッセージを読み取ろうとしなければならない。

イングランド銀は異端を許容

とはいうものの、もっと異端の考え方を許容する余地がある。その意味でBOEがより広範な見解の認知に取り組んでいるのは心強い。たとえば、バンク・アンダーグラウンド(同中銀本店地下の地下鉄駅を指す言葉)と呼ばれるブログでは、優勢な政策について異を唱えたり、あるいは支持したりする若手スタッフによる投稿が掲載されている。

数週間のうちにバンク・アンダーグラウンドは挑発的な考えの豊かな情報源となった。8月中旬(このとき、BOEの重鎮たちは留守でスタッフには自由があった)の投稿は、バーゼルIIIの資本規制の核心に位置する銀行内部資本モデルの弱点のいくつかを指摘した。

7月の別の投稿は、経済が回復するにつれて非金融企業が現金残高を減らして投資に資金を回し始めると予想できるというBOE公式見解にはっきりと異を唱えた。

おそらく、いつかはこうしたブログのFRB版が登場するだろう。が、ECB版が近い時期に登場するかについては楽観的になれない。

週刊東洋経済9月12日号

ハワード・デイビス 英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス前学長

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英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス前学長。監査委員会、英国産業連盟、イングランド銀行副総裁、金融サービス機構(FSA)初代理事長などを経る。

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