厳しくしすぎれば、「何も食べられなくなる」 組み換え食品を特別視するべきではない

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――私たちのいままでの経験から、口にしても大丈夫だったものは安全ということ?

経験の範囲内でなら大丈夫ということ。たとえば平均寿命は昔よりそうとう長くなったが、発がん物質の影響は寿命が長くなるほど大きくなる。また、昔であればそんなに長生きできなかった病気を抱えて生きている人がいまはたくさんいる。そういう方にとって、現在流通している食品が安全かどうかはこれまでの経験だけではわからない。たとえば透析をしている方がスギヒラタケというキノコを食べると、急性脳症になるリスクが高いということが、被害者が出て初めてわかった。

何かに偏らず、いろいろなものを万遍なく食べるのが一番のリスク回避策になる、という畝山智香子氏

またその人の状況により安全のための対策は異なる。たとえば自分がカニのアレルギーだったら、カニを避けなければいけない。小さい子どもや妊婦の場合も、注意すべきことの優先順位は違ってくる。

毎日主食で食べているおコメひとつとっても、何が入っているか考えたことはあるか、どうやって作られたか知っているか、炊いたときにどう変わり、こげたときには何ができるのか。多くの人は知らないと思う。おコメはヒ素が多いから、外国では子どもには食べさせるなと言われているところもある。知らないことばかりなのに、(遺伝子組み換え作物のような)特定のものにだけ、あれもこれもダメと言うのはおかしいのではないか。

いろいろなものを食べるのが一番

結局は、何かに偏ることなく、いろいろなものを食べるのが一番リスクを軽減できる。

――遺伝子組み換え食品の審査では、「実質的同等性」という概念が安全性の基準になる。これは、たとえばいままでの一般的なトマトと、遺伝子組み換えされたトマトに違いがない、ということか。

そう。完全に同じということはありえないので、実質的といういい方をする。安全性に関して、従来のものと差がないという考え方。

――自然界では起こりえない人為的な遺伝子組み換えをすると、予期せぬ性質が出ることもあるのではないか。

遺伝子組み換えだけでなく、これまでも突然変異を人為的に誘発した品種作成はたくさん行われてきているが、これも予期せぬ性質が出る可能性があるといわれつつ、いままで大きな問題になるものは出ていない。もし有害なものが出ていれば、遺伝子組換え作物なら安全性審査でひっかかる可能性はある。遺伝子組み換えのほうが、どの遺伝子をいじったかわかるので、その周辺の遺伝子がどれくらい動いたかをみることもできる。

一方、突然変異を誘発した場合は、何がどう動いているのかさっぱりわからない。でも突然変異誘発はフリーパスで、特段(安全性に関する)審査はない。突然変異は化学物質によるものと放射線による誘発があるが、私たちはそうした品種を普通に食べている。

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