「便利な製品」を卒業したアップルが目指すもの 新製品が「何も変わっていない」という人たちへ

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最近、自宅での簡易検査を提供している医療機関もあるが、その方法は血中酸素濃度を測る専用機器「パルスオキシメーター」をつけて寝るなど大掛かりな割には偏った情報しか取れない。そもそも、これはすでにある程度、自分は睡眠時無呼吸症候群かもしれないという自覚があるからこそ受ける確認用のテストだ。

対してApple Watchでは、日々使う睡眠記録機能の延長線上で、睡眠疾患の兆候を発見できる。Apple Watchの加速度センサーを使って睡眠中の正常な呼吸パターンの中断に関連する手首の動きを検出するという仕組みで、睡眠時の呼吸がアルコール、服薬、姿勢などの影響を受けることを考慮して30日ごとの呼吸の乱れをもとに診断を行う。

こうした情報は、ユーザーが許可すれば医師にもPDFファイルとして共有が可能で、より深い診断の材料として使うことができる。

こうしたことができる機器は現在、Apple Watchをおいてほかにない。しかも、アップルはこうした技術を持つ会社を買収したのではない。同社は2015年、大学などの研究機関が健康に関する課題の研究をするために、iPhoneやApple Watchで健康データの提供を許可してくれる被験者を募る「ResearchKit」という開発基盤を提供。これを通じて、世界の研究機関で重要な疾病に関する研究が一気に進んだのである。

「呼吸の乱れ」を診断する機能も、そうやって長い年月を経た研究が身を結んだもので、他社が一朝一夕に真似できる機能ではない。

アリゾナ大学ヘルスサイエンスの睡眠・サーカディアン・神経科学センターのサイラム・パルサザラシー所長は、「睡眠時の呼吸の乱れの存在を確実に特定できるようにすることは、睡眠時無呼吸のような、診断が見過ごされがちで深刻な疾患を発見するために役立つ。これは公衆衛生の改善において大きな前進だ」と評している。

十数億人を助ける「AirPods Pro 2」

もう1つ質問しよう。

「日本ではおよそ1500万人で世界では十数億人」ーーこれは何の数字だろう?

答えは難聴者の推定人数だ。耳の聞こえの悪さは年長者の問題だと思っている人も多いが、実は日々、大音量で音楽のライブを聴いている人など若者でも少なくない。耳の聞こえが悪くなると、そのうち何度も聞き返すのが辛くなり、孤立感を生むようになる。

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