「便利な製品」を卒業したアップルが目指すもの 新製品が「何も変わっていない」という人たちへ

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新たなiPhone16もAI性能を大幅に向上させたプロセッサや、いつでも簡単にカメラを呼び出せるデザインといった特性を生かしたアプリが増えて初めて、本来の魅力が伝わる。ただ、未来に向けてのポテンシャルの話なので、想像力があまり働かない人には「何も変わっていない」と映ってしまう。

だが、せめて製造業の関係者にはそうした表層だけを見ずに、いずれアップルを追い抜けるように、もっと深い部分を見て学び、一刻も早く中長期の戦略に投資し始めてもらいたい。

というのも、ここ数年、アップルが小さなギミックよりも、はるかに多くの労力を割いているのは、大企業にしかできない人々の価値観や社会の仕組みさえも変えてしまいそうな「大きな枠組み」であって、それらは一朝一夕ではなし得ないからだ。

そうしたさまざまな大きな取り組みの中で、今回紹介したいのが、人々の健康を守る取り組みだ。先月行われた新製品発表会では、新商品以上に大きな印象を残している。

10億人の運命を変えるApple Watchの新機能

さて、ここで1つ質問しよう。

「日本でおよそ900万人。世界では10億人」。これは何の数字だかわかるだろうか?

答えは睡眠時無呼吸症候群という疾患の潜在的患者数だ。睡眠中に一時的に呼吸が止まり、身体が十分な酸素を取り入れられなくなるというもので、治療をしないままでいると、高血圧、2型糖尿病、心疾患のリスクが高まるなど、時間の経過とともに重大な健康への影響をもたらす可能性がある。

テレビの健康番組などで、芸能人が医療機関に泊まり込んでその兆候があるかのテストをしている様子を見たことがある人もいるだろう。医療機関に泊まり込む必要があることからもわかるように、この疾患の発見は厄介でお金もかかる。

こうした中、こうした中、アップルは数年前からリリースしていたApple Watchの睡眠記録機能を拡張し、臨床的にも認められた形(厚生労働省からも認可を受け、医者が診断の際に役立つ情報を書き出す機能も用意した形)で、「睡眠時無呼吸の兆候」を検出してユーザーに教える機能を開発した。日本では、10月第2週には厚労省から最終承認が降りてこの機能が利用可能になる。

ウェアラブルデバイスでこの疾患を検出できるようにしたのは世界初の快挙だ。

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