鈴木さんはその過程で、自ら何かを造形するよりも、新しい体験を通して人と触れ合い、話を聞いたり、それを発信することが好きなのだと気づく。
「海外の旅から帰ってからは、フリーランスのライターとして開業しました。仕事は順調で、ベンチャー企業の自社メディアで副編集長を勤めたり、その企業の本を執筆したり。人の縁が仕事になっていくことが楽しくて、これぞ天職だと思えていました」
ライターの仕事に面白味を感じ始めていた頃、鈴木さんに新たなチャンスがめぐってきた。
「知り合いの編集者とお酒を飲んでいたとき、京都の自転車屋さんで働いていたときに出会った人々のことを話していたんです。
『京都には小規模でも自分が好きなことを仕事にしている、ユニークな人がたくさんいる』と伝えたら、興味を持ってくれて。トントン拍子で書籍化が決まりました」
鈴木さんの著書『京都の小商い~就職しない生き方ガイド~』(三栄書房)は、京都で小規模事業に取り組む人々のインタビュー集で、自営業の魅力が詰まった本だ。同じような生き方を目指す読者からの、反響も大きかった。
社会にもまれて離職・離婚、30代の挫折
フリーランスとしての働き方を満喫していた鈴木さんだが、30歳を機にオウンドメディア(企業の自社メディア)支援に特化した編集プロダクションに就職する。苦労が始まったのは、それからだ。
「30代になるタイミングで就職をしたのは、会社の中で働いて『集団でもちゃんとやれる』という自信をつけたかったのだと思います。20代にある程度の成果を出していたので、会社員になっても多少はやれるだろうと、根拠のない自信がありました。
ところが就職したコンテンツマーケティングの会社では、まったく成果を出せなかったんです。そのことで鬱状態になって。結局、離職することになりました。それは自分にとっては大きな挫折でしたね」
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