企業のPRメディアを製作・運営する仕事は、ライターの経験がある鈴木さんに向いている仕事のように思える。しかし会社で要求されるスキルは、それまで経験してきたものとはまるで違うものだった。
「執筆・編集に加えて、その会社ではマーケティングの知識やクライアントとの折衝などが必要でした。その点、僕は執筆経験はあっても、社会人経験が圧倒的に足りなかった……。
そんなこともあって成果が出せず、周囲のデキる人と比べては劣等感を募らせていました。数字が上がらないだけでなく、仕事のミスから炎上騒ぎを起こしてしまったこともあって、自分を責める日々でした。
当時はいつも仕事のことが頭から離れず、つねにスマホやPCで数字を追いかけていましたね。そうこうするうちに、鬱状態になってしまったのです」
WEBのメディアはどれくらい記事が読まれたか、また読み手がどんなアクションを起こしたかまでが、数字となって表れる。鈴木さんは追い詰められ、負のスパイラルに飲み込まれてしまった。
「つらかったです。『なんでこんなに自分は仕事ができないんだろう?』と辞めた後もずっと落ち込んでいて、そんなときに後に妻となる女性と出会ったんです。自信を失っていたからこそ、『こんな自分でも好きになってくれる人がいる』という事実に、救われました」
たとえ一つの場所で結果が出せなくても、それはその会社で起きたことにすぎない。しかし当事者にとっては、そう簡単に切り替えられるものではないだろう。そんなときは、身近な誰かに必要とされ、愛されることで、救われ、前を向けることがある。鈴木さんもそうだった。
まずは自分を幸せに。離婚後に選んだひとり暮らし
鈴木さんは自分を慕って頼ってくれたこの女性と交際して半年ほどでスピード結婚した。当初はふたりで歩む未来に希望を持っていた鈴木さんだが、結婚生活は約4年で幕を閉じる。
「彼女はもともと精神的に不安定なところがありました。それは彼女も隠していなかったし、僕も承知のうえで結婚したのですが、僕自身もまだ前の会社で離職した経験から万全の精神状態ではなくて……」
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