「『熱が出ました』や『頭が痛いです』という患者さんの話を聞いて解熱剤や頭痛薬などを処方したり、救急車が来たときに最初に診察して上級医に伝達したり、診療に必要な手技を練習し実践させてもらったり、といった具合です」
そして、気になる奨学金の返済だが、今月から始まった。
「1200万円を20年で返していくので、240回払いなんですよね。返済額は毎月5万円。『医者になるのだから、そこまで負担にならないのでは?』と思われるかもしれませんが、わたしの今の給料は基本給25万円に当直費などアレコレ手当が入って、手取りは22万〜28万円くらいです。ということは、社会人3年目の友達とそんなに変わらないんですよね」
いくら、医者といえども初任給はどの業界も低いもの。そこで、杉村さんは可能な限り、節約を心がけている。
「初期研修医になる前から、手取りが22万円程度になるのはわかっていたため、生活費をかけないように準備していました。例えば、初期研修医は寮に入れるのですが、光熱費込みで2万円です。普通に暮らそうと思うと、家賃は6万円くらいはかかりますよね。それが光熱費込みで2万円というのは『実質無料』という感覚です」
いくら研修医とはいえ、夢がなさすぎるのではないだろうか……? その一方で、街の病院に勤務すれば1年目でも、1カ月で手取り46万円もらえることもあるという。ただ、教育機関として医学教育を行う大学病院でしっかり学んだほうが実力のある医師になれると考えたこと、専門医の資格を取得するためには大学病院での研修が必要になることなど、将来を考えて大学病院で勤務することに決めたそうだ。
そんな、茨の道を選んだ杉村さんだが、奨学金返済を見越して、そのほかにも準備はしてきた。
「第二種奨学金を20年かけて返済すると、利子の関係で返済総額が1000万を超えると知ってびっくりしてしまいました。借りたのは864万円ですが、『思ったよりも高くついたな……』と思いましたね。
そのため、繰り上げ返済ができるように、学生時代からアルバイトで貯金した分と4月から毎月15万円前後、夏ボーナス分すべて貯金して、今は200万円貯まっています。これを来月一気に『ドン!』と返したいですね。
第一種奨学金とあしなが育英会は無利子のため、特に気になりませんが、今後は奨学金返済と貯金のバランスをうまく考えていきたいと思います。例えば、勤務地的に将来的に自動車が必要になるのですが、車のローンよりも奨学金の金利のほうが低いんですよね。
そのことを考えると『貯金を繰り上げ返済に使うより、車の頭金にしたほうがいいのでは?』と思ったりしています。とはいえ、早く第二種奨学金を返すに越したことはありません」
これから1200万円を返していくと考えると先の長い話だが、それでも杉村さんは奨学金のおかげで、子どもの頃からの夢だった医者に一歩近づいた。
ただ、医学部の学費が高いのは仕方がないとはいえ、その壁を越えるためには、1000万円以上の奨学金を借りなければならない現状を、どう思っているのだろうか?
「すべての奨学金を無利子で借りられるように!」
「わたしは奨学金の力で医学部に通うことができたため、『夢を叶えられる』という意味では、奨学金は必要な制度だと思います。一度も後悔はしたことありません。ただ、ここまで利子を付ける必要あります?(笑)
例えば、第二種奨学金を『変動性』にすればもっと安くなるという話も聞きますが、『変動性』や『固定性』などと専門用語を並べて、受験に焦る高校3年生に『ほら、選べ』というのはあまりにも酷だと感じます。
しかも、前出の車もそうですが、住宅ローンなども奨学金の利子とあまり変わらないんですよね。国がやっている施策なのにですよ? そのため、奨学金に0.905%(※杉村さんの場合。人によって異なる)もの利率を掛けているのは、まったくもって政府の怠慢だと思います!
わたしは途中で給付型奨学金もいくつか給付してもらえたのが救いでした。『すべての奨学金を給付型に!』とは言いませんが、『すべての奨学金を無利子で借りられるように!』とは声を大にして言いたいですね。やはり、第二種奨学金は制度としておかしいと思います」
これは筆者も常々感じていることだが、なぜ「人命を救う」職業に就こうとする者たちに、国はまったくサポートしないのかということである。このままでは、1000万円以上の奨学金を抱えた医者たちが、ゴロゴロと溢れかえる未来もあり得るのではないか? 奨学金制度は重要ではあるが、そのあり方に変革が求められている。
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