正確にいうと、光が逃れられないのは、「空間がゆがんでいるから」です。じつは、ブラックホールのまわりでは、空間が強烈にゆがんでいます。
空間が曲がっていると光の進路も曲がります。ブラックホールの境界を越えた光は、「ゆがみまくった空間に閉じ込められて脱出できなくなってしまっている」のです。
困ったことに、ブラックホールから「光(電磁波)」が出られないということは、何の「情報」も届かないことを意味します。もし、ブラックホールに入って何か有力な情報をつかんだとしても、残念ながら外に伝える術はありません……。こうした理由からも、ブラックホールの穴のなかの様子は「わからない」のです。
ブラックホールの境界は、専門用語で「事象の地平線」といいます。この地平線の向こうでは、どんな出来事(事象)が起きているのかわからない、ということを意味しています。
時空がゆがみ、現在地で時の進みが変わる
ブラックホールのまわりでは、空間だけではなく、時間もゆがんでいます。
じつは、時間の流れかたは場所によって異なります。ブラックホールのように重力が強いところにいると、時間の流れが「遅くなる」のです。
重力の「弱い」場所→ 時間の流れかたが「速く」なる
ブラックホールに近づくと、自分の動きがカタツムリのように遅くなる、というわけではありません。ややこしい話ですが、ブラックホールの近くにいる人にとっても、時間は普通に過ぎていくように感じます。しかし、ブラックホールの「近くにいる人」と「遠くにいる人」で時計を比べると、経過した時間がズレてしまっているのです。
過ごした場所によって時間の進みかたがズレてしまうなんて、不思議すぎますよね。ブラックホールの場合、重力が強すぎるため時間のゆがみも強烈なのです。
ある人がうっかりブラックホールの境界に近づくと、「あっ」という間に吸い込まれて帰らぬ人となります……。しかし、ブラックホールから離れた場所にいる人がその様子を目撃すると、吸い込まれる人の「あっ」という瞬間は、「あーーーーーーー……」と永遠に長く感じるということになります。
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